こうの史代/さんさん録(全2巻)
(双葉社 2006年)

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<ストーリー>
妻を亡くした初老の男性・奥田参平(参さん)は、息子一家と同居することに。
妻の存命中は仕事一筋、縦のものを横にしたことすらない参平ですが、
息子の嫁・礼花が勤めに出るのを機に、一家の主夫を引き受けます。
頼りは一冊の分厚いノート。 
それは亡き妻が夫のために、生活の知恵の数々を書き記したものでした。


「夕凪の街・桜の国」で人気の漫画家・こうの史代さんの最新作は、ホームドラマ。

平凡な人々の平凡な暮らしをを描いているだけなのに、ページを繰る手が止まりません。
上記のストーリー紹介からは、妻の残したノートを武器に参さんが、幾多の失敗を乗り越えてスーパー主夫となってゆく・・・
みたいな展開を予想しますが、全然違いました。
前半は多少「おばあさんの知恵袋」的要素もありますが、後半はもう家事漫画ではなくなって、
私の語彙ではただ「ホームドラマ」としか言いようがありませんな。
「老いらくの恋」もありますが、サラリと描いてイヤラシクないのは良いですね。

主人公に特殊な能力や才能があるでもなく、過去の暗い秘密をかかえて生きるでもなく、
犯罪や災害が起こるでもなく、のほほんとした毎日ですが、なんでこんなに味わい深いの?
ひょっとして小津安二郎の映画って、こういう感じなのでしょうか(見たことありませんが)

・・・と書くと、まるで純文学を漫画にしたみたいなカタイ作品を想像されるかも知れませんが、基本的にはコメディであります。
一話一話、きちんとオチがついています。
私、笑いの閾値はそこそこ高いつもりですが、何度か爆笑させられ不覚を取りました。 おぬしできるな。
あと、セリフがなく絵だけに語らせる回や、「花」が語り手をつとめる回、
現実と空想が同時進行する回(この表現は漫画以外では不可能!)など、実験的な試みも。

登場人物では虫が大好きな孫娘・乃菜のキャラクターが最高。 虫愛ずる姫君の将来、楽しみです。
ラストはやや唐突というか、余韻を残しまくった終わり方。 え、え? このあとどうなるんだろう?

こうのさんの作品は、再読・再々読に耐えるので、コストパフォーマンスは非常によろしいです。
ほら読み返すとまた新たな発見が・・・(←そもそも読みが浅いだけでわっ!?)

(06.8.21.)




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