こうの史代/ぼおるぺん古事記(全3巻)

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「古事記」がこんなに面白くていいのですかっ!?


「古事記」って、こういう話だったのか〜〜!

断片的には知っていましたが、それらがつながり、ひとつの物語として認識できて感激。
この「つながったぞ!」感は、大和和紀「あさきゆめみし」 あずみ涼「ニーベルングの指環」 を読んだときに匹敵します!
どれも漫画ですが、ジャパニーズ・マンガを舐めてはいけないのです。
めでたく「古事記を知ってるワタシ」になれました。


以前「夕凪の街 桜の国」 「さんさん録」を取り上げたことのあるこうの史代
ほんわかした絵柄にもかかわらず、つねに実験的・挑戦的な手法で新しい漫画の地平を切り開き続けているアーティストです。
昨年(2012年)は、古事記編纂1300年の節目の年だったそうで、
そういう理由があってかなくてか(たぶんある)、新作は「ぼおるぺん古事記」であります。
全編ボールペンで描いてしまった(←実験的!)のにもびっくりですが、
すごいのは「原文がそのまま」使用されていること(正確には読み下し文)
省略なしで全文掲載し、忠実にヴィジュアル化してあります。
難解ですが、絵がつくとけっこうわかるものです。

冒頭数ページが和綴じになっていて、著者の手書きによるホントの原文(漢字だけ)がびっちり綴られているのにまず圧倒。

 天地初發之時於高天原成~名天之御中主~訓高下天云阿麻下效此次高御日~次~日~此三柱~者並獨~成坐而隱身也次國稚如浮脂而久羅下那州多陀用幣流之時流字以上十字以音如葦牙因萌騰之物而成~名宇摩志阿斯訶備比古遲~此~名以音次天之常立~訓常云登許訓立云多知此二柱~亦獨~成坐而隱身也・・・

並々ならぬ気迫を感じます。
あたかもシェフが目の前に生の食材をドンと置き、「どんな料理ができるかお楽しみに!」とタンカを切ってるみたいです (←シェフはタンカを切らないと思う)。

つづいて独特のほんわかした絵柄でもって、
おおらかで残酷でグロテスクでハチャメチャで淫靡でロマンティックな「古事記」の世界が、このうえなく完璧に絵解きされてゆきます。

 

一度名前が出てくるだけの下っ端の(?)神様もすべて絵で描かれ、作者の「古事記」への「愛」を感じずにはいられません。

ただひとつ難点は、ルビが小さいこと、
老眼世代には辛いよ・・・。

なお、「古事記」は「上つ巻」「中つ巻」「下つ巻」の3巻から成り、今回マンガ化されたのは
天地創生から神武天皇誕生までを記述した「上つ巻」のみ。
いつか続きに取り組んでくれるでしょうか、気長に待ちたいです。

(2013.3.9.)



ぼおるぺん古事記 第1巻より

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