ヘンデル/クラヴィーア組曲全集
(スヴィャトスラフ・リヒテル&アンドレイ・ガヴリーロフ 1979録音)
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ヘンデルのクラヴィーア組曲といえば、厳格なバッハに対し、気ままでユルくて即興的な印象ですが、そこが魅力。
「調子のよい鍛冶屋」なんて親しみやすいタイトルのついた曲もあります。
バッハに較べると録音は少ないですが、ハープシコードで演奏したものでは、ソフィー・イエーツのCDが素晴らしいと思います。
あと、グレン・グールドがハープシコードを弾いた、サイケデリックなぶっとび珍盤も忘れがたい。
ピアノで弾いたものとなるとさらに少なく、ほとんど絶滅危惧種なみ。
全曲盤はこのCDくらいしかないのでは?
興味深いのが、お互いに譜めくりをしていること (リヒテルは演奏会では必ず譜面台に楽譜を置いて演奏しました)。
譜めくりしてくれる人がどうしても見つからなかった・・・とは思えないので、意図的にやってるんでしょう。
リヒテルに譜めくりをしてもらったピアニストは、世界広しといえどガヴリーロフが唯一無二ではないでしょうか。
(譜めくりというより「見張り」みたいですが)
演奏は流石の一言。
ピアニストにとってテクニック的には容易な楽譜から(いや私は弾けませんが)、最高に味わい深い音楽を引き出します。
立て続けに3時間聴いても飽きません。
それどころか、サラサラと涼しげな音の遊戯の中で永遠に遊び戯れていたくなるほどであり、ヘンデルの軽妙さにもかかわらず濃密な時間が流れてゆきます。
どういう経緯でヘンデルを全曲演奏することになったのかはわかりませんが、どうやらリヒテルもガヴリーロフもヘンデルに深い思い入れがあるわけではなさそう。
なのでふたりとも客観的で即物的な解釈であり、それが良いのです。
余計な色付けをせず、ニュートラルに響きを構築、リズムは切れ味よく、音色は鮮明であり、それでいて感情に直接働きかけることがありません。
ずっと聴いていても飽きない理由はそこにあるような気がします。
(2019.08.11.)
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