ジョージ・G・スピーロ/ポアンカレ予想
世紀の謎を掛けた数学者、解き明かした数学者
(ハヤカワ文庫 2011年)
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巨大なボールの表面を這いまわるアリ(2次元存在)にはわからないけど、空飛ぶハエ(3次元存在)にはわかることは?
それは、アリが這っているのが、巨大なボールであって、穴の開いた巨大なドーナツではない、ということ。
(注)「2次元アリ」は高さの概念を持たないので、視界も2次元(平面上)に限られる
さて、私たちの住む3次元空間(つまり宇宙)は、じつは4次元物体の表面である。
では、われわれの宇宙は4次元球体の表面だろうか? それとも4次元ドーナツの表面だろうか?
4次元が見えない私たちには永遠にわからないのだろうか?
いや大丈夫、長いロープの片方の端を持って、ロケットで宇宙をくまなく回り、帰ってきてから、両端を持って手繰り寄せてみよう。
ロープが全部手元に手繰り寄せられたら、私たちの宇宙は球体だが、
どこかでひっかかって手繰り寄せられないなら、ドーナツだ・・・と言って良いと思うんだけどさ、
ホントに良いのかな? ボク合ってる?? 間違ってない、これ???
20世紀初頭から100年間、誰も解けなかった超難問、ポアンカレ予想とは、煎じて言えばこういうことらしいっす。
難問に挑みつづけた数学者たちのエピソードを追いながら、現代数学の発展を垣間見る数学ノンフィクション。
ポアンカレ・・・。
それはカレーの一種ではなくて
位相幾何学(トポロジー)の難問「ポアンカレ予想」にその名を残す数学者。
「フェルマーの最終定理」「リーマン予想」と並んで有名な問題です。
「フェルマーの最終定理」はワイルズによって1993年に解かれました。
そして「ポアンカレ予想」は2002年に、
ロシアの数学者グレゴリー・ペレルマンによって正であることが証明されました。
(残るは「リーマン予想」ですぞ、みなさん!)
本書は、偉大な数学者ポアンカレの人となりから書き起こし、
「ポアンカレ予想」に挑んだ多くの数学者たちの苦闘、
謎のロシア人ペレルマンによる証明と、
その後のドロドロ・ゴタゴタから数学者同士のバトルまで
生き生きとした筆致と分かりやすい文章で書きつづった一冊。
サイモン・シン「フェルマーの最終定理」、
マイケル・デュ・ソートイ「素数の音楽」(リーマン予想について書かれている)
と肩を並べる名著だと思います。
しかし・・・、やはりムツカシイですな。
とにかく「ポアンカレ予想」自体を理解するのが一苦労。
専門用語では、
「単連結な3次元閉多様体は3次元球面S 3に同相である」
と言うそうですが、これっぽっちもわけわかりません。
煎じつめれば上に長々と書いたようなことらしいのですが、
「4次元」をイメージできない凡人としては、なーんかわかったようなわからんような・・・。
さらにわからないのは、これを証明するのがなんでそんなにもオオゴトだったのかということです。
世の中にはよくわからないことがたくさんあることがよくわかりますが(←ややこしい)、
それでもこの本は面白かったです。
ポアンカレ(1854〜1912)は頭脳明晰・成績優秀なだけでなく、非常に勇敢で責任感のあるイイ奴(←友達かい)で、
若いころは炭鉱技師として、身の危険も顧みず事故の起きた炭鉱の現場検証を行い、
論理的推理から、見事に事故原因を解き明かしたりしました。
他にも多くの数学者のエピソードがてんこ盛りですが、
なんといってもインパクト大なのは、ポアンカレ予想の解決者グレゴリー・ペレルマン(1966〜)。
彗星のように現れて数学界100年の難問を解いておきながら、
フィールズ賞は辞退するわ、
クレイ社提供の100万ドルの賞金も受け取らないわ、
ついには数学の世界と完全に縁を切り、隠棲してしまいました。
いったい何があったのか・・・。
結局のところ、そのあたりの人間ドラマが一番面白かった私であります。
(11.5.10.)
こんなDVDもあるでよ
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Tower@jp : ポアンカレ予想・100年の格闘 〜数学者はキノコ狩りの夢を見る〜
You Tube/ポアンカレ予想・100年の格闘(ショート・クリップ)
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