池谷裕二/進化しすぎた脳(朝日新聞社 2004年)




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脳とコンピュータの、一番大きな違いはなんだろう?

若手大脳生理学者・池谷裕二氏が、中高生を対象に脳について語った講義録。
"Nature" の最新論文をとりあげて説明するなど、難しいことをわかりやすく語りながらレベルを落とさないテクニックは、
「暗号解読」のサイモン・シンに通じるものが。

人間の脳は、潜在的に物凄い能力を持っているが、身体を動かしたりするためにはその数%しか必要とせず、つまり脳は過剰に進化しすぎているそうです。
「<人間の身体>という性能の悪い乗り物に、残念ながら脳は乗ってしまった」(93ページ)わけで、
もし人間に腕が20本あったとしても、脳はそれらを使いこなすだろうと。

「人間の記憶が曖昧なのにはちゃんと理由がある」こととか(むしろ下等生物のほうが記憶は正確)、
「アルツハイマー病の原因はどこまでわかっているか」など、
きちんと裏づけを明らかにしながら、我々にもわかるように説明してくれます。

ただ、ナトリウムイオンやNMDA受容体が出てくるあたりから、正直ちょっと難しくなってきまして、
私の脳はこれらの話を理解できるほどには進化していないようです。
まあ、わからないところは適当に読み飛ばしても充分楽しめます。

それにしても脳のしくみを考えるときにも、人間は脳を使っているわけですが、それでもいまだに脳のことは良くわからない・・・、
なんだか面白いですね。
やっぱり自分のことは自分にはなかなかわからないということか(・・・違うと思う)。

さて、「脳とコンピュータの一番大きな違い」は何なのか。
仮にキーボードやマウスやその他のデバイスを取り去っても、コンピュータ自体の能力は何も変化せず、またデバイスをつなぎなおせば以前と同じように機能します。
ところが脳は身体や環境によって強く影響されていて、手足などのデバイスを使わないと機能低下するんだそうです。
つまり脳の「能力のリミッターは脳でなくて身体」なのです(97ページ)。
・・・うーむ、このあたりを簡潔に説明するのは、脳もパソコンも2%しか使いこなせていない私には荷が重い。
興味がある方はどうぞお読みください。

(05.2.27.記)


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