サイモン・シン/暗号解読(新潮社 2001年)



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暗号解読 上巻 (文庫)

暗号解読 下巻 (文庫)


知らなかった! 世界がこんなにも暗号で満ちていたとは!


「フェルマーの最終定理」で、現代数論の最先端をわかりやすく語ってくれた
サイモン・シンのノン・フィクション第2作です。
太古から連綿と続く暗号の歴史と、その裏で繰り広げられた人間ドラマの数々。

ファラオの墓に刻まれたヒエログリフにも暗号で書かれたものがあること。
エリザベス女王暗殺計画を記した、スコットランド女王メアリーの暗号文書はなぜ見破られたのか。
19世紀アメリカ、金塊堀りの男が残した暗号文「ビール暗号」はいまも未解読。
ドイツ軍の最強暗号機「エニグマ」を発明した天才科学者 vs エニグマ暗号に挑んだ連合軍の解読者たち。
そして、私たちがインターネットでクレジット決済ができるのも暗号のおかげ。

著者のサイモン・シン、さまざまな暗号の仕組みを、読者にきっちり理解させてくれます。
難しいことを分かり易く説明し、しかもレベルを落とさないのは至難の業。 
本当に頭の良い人なんだな〜、爪のアカ煎じて飲みたいっす (本当に飲ませないでくださいね)
そして、人間の喜びや悲しみへの深い洞察。 
たとえば、第2次大戦中、ドイツ軍の暗号解読に成功した連合軍の面々は、
機密を守るため、自分達の業績について戦後も長い沈黙を強いられました。
そんな無名の英雄達に対する作者の筆致は暖かいです。

一方で、強力な暗号システムを作り出すことで億万長者になった人たち。
そう、暗号はビジネスになるのですね。
「量子暗号」と呼ばれる、第三者には絶対に解読不可能な究極の暗号システムを作り上げれば、誰でも大金持ち。
そのために必須なのは、数学とコンピュータの専門知識です。
数学というのは、お金にならない学問の代表格だと思っていた私、これには驚きました。
「数学を勉強して、将来なんの役に立つの?」という子供には、ぜひこの本を読ませましょう。
そして、「量子暗号システム」を作らせるのだあ〜。 がんばれ、わが子よ!!

(05.2.14.記)

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