奥泉光/モーダルな事象〜桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活
(文藝春秋 2005年)



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これ笑えます。

短大文学部助教授・桑潟幸一氏の情けなさにいきなり大笑い。
文学部の先生って、皆が皆こうじゃないですよねえ、まさか、と思いながらも、
振り返ってわが日常と比べれば、その本質においてどれだけの違いがあるだろうと考えてるうちに、
無名&夭折の童話作家・溝口俊平なる人物の未発表原稿が登場、
遺作「明星のちかい」のストーリーにまた大笑い(これはひどい!)
それがオシャレな装丁と「泣ける」という殺し文句で、あれよあれよとベストセラーになる過程でまたひと笑い。

それから男性の首なし死体が登場、ジャズ・シンガー・北川アキと、もと夫の諸橋倫敦(ふざけた名前)は、
だれも頼んでないのに事件に首を突っ込んで日本各地を行ったり来たり。
行く先々でうまいものをたらふく食って、自分達の金だから文句をつける筋合いじゃないですが、いいなあ・・・。
香川に来てさぬきうどんも食ってます。
そしてラストで桑幸氏が選び取る「スタイリッシュな生活」とは?
ある意味、清清しい終わりかたですね。 そこまでせんでも、って気もしますが。

と、まあ、こんな小説でございます。

え、ミステリ? これってミステリなんですか?
歌野晶午「葉桜の季節に君を想うということ」と同じ、「本格ミステリー・マスターズ」の一冊だって?
「このミステリがすごい!2006年版」にもランクインしているって?
・・・へえ、そういう読み方も出来るんですね。 なるほどなるほど。(←こらこら)

なお、本作は同じ著者の「鳥類学者のファンタジア」と登場人物や設定が一部共通しています。
フォギーさん、相変わらずのボケ振りで安心しました。
あれも歌って笑える楽しいコメディ小説だったなあ。
・・・ええっ、あれもミステリなの??

(05.12.11.)

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