三善晃/ピアノ協奏曲(1962)
(本性玲子:ピアノ 若杉弘:指揮 読売日本交響楽団 1970録音)



Amazon : 三善晃の世界・ピアノ協奏曲

日本人の作ったピアノ協奏曲で最高傑作といえばやはり、

 矢代秋雄「ピアノ協奏曲」(1967)

だと思いますが、「それに優るとも劣らないんじゃ?」と最近ひそかに思っているのが、

 三善晃(1933〜2013)「ピアノ協奏曲」(1962)

です。

13分少々というコンパクトな曲。
凝縮された熱さと濃密さ、ただならぬ緊張感で駆け抜けます、一瞬の弛緩もありません。
続けて演奏される急・緩・急の3つの部分からなり、各部分の間にカデンツァが挿入される構成。
急の部分のピアノはフリージャズを連想させ、緩徐部分は「和」の雰囲気。



第1部:管弦楽の何やら緊張をはらんだ序奏に続き、ピアノが「ドガチャガドカドカ」と飛び込んできて、一息入れてから主要主題を提示(0:22)。
序奏とドガチャガと主要主題が絡み合いながら展開し、1:41でそれらが統合、いきなりクライマックスになっちゃいます(はえ〜)。
いやーいいですねこの展開の速さ、テンションの高さ。

2:23で第1部は終わって、カデンツァ
ここはジャズっぽいです。キース・ジャレットかチック・コリアかって感じ。
第1部の主題がちょこっと展開されたりします。

3:20、ピアノに静かなメロディが登場するところから第2部
ピアノのモノローグにフルートが応え、弦楽器がやさしく受け止める幽玄の世界、音で聴く絵巻物です。
5:40ごろからチェレスタやグロッケンシュピーゲルが加わり、
6:35からは音の桃源郷、触れなば落ちんような儚げな響きに耳が吸い寄せられます。
8:55からのヴァイオリン・ソロとフルートのフレーズの日本的な繊細さ!

第2部が終わって9:22から第2のカデンツァ
これはラヴェルのようなセンシティブな音の身振りが魅力的な短いカデンツァで、後半激しく駆け回り、
10:03〜虫の羽音のような弦の響きとともに第3部が開始。
第1部の主題群が変形して再登場、ピアノは縦横無尽に駆け巡り、叩きつけ、きらめく光跡を残して大活躍。
ここもジャズ感覚で聴いてしまいます、一番指が廻るときのハービ−・ハンコックもかくやって感じ。
12:03からちょっとテンポを落として雄大な感じになり、
12:48から再びテンポを上げて激しいコーダ、管弦楽の力強い響きにめくるめくピアノの連打、華々しく掛け合って一気呵成の大団円!!


いやー、いい曲です、すごいです、迫力です。
聴く者に「協奏の愉しみ」を、肉体的かつエモーショナルに刻み込んでくる名曲じゃないでしょうか。
13分で聴けますからぜひ一度お試しのほど。
ロックやジャズが好きな人にも、意外と響くんじゃないかなあ。

(2018.02.12.)


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