カミラ・レックバリ/氷姫(2003)
(集英社文庫 2009年)



Amazon.co.jp : 氷姫―エリカ&パトリック事件簿 (集英社文庫)



<ストーリー>
女流作家エリカは、少女時代の大親友なのに、ある時からなぜか疎遠になっていたアレクサンドラ
自宅の浴槽で手首を切って死んでいるのを偶然発見します。
当初は自殺と思われましたが、やがて殺人であることが判明、
エリカは幼なじみの刑事パトリックとともに事件に関わることに。
富豪と結婚し、画廊を経営し、華やかに暮らしていた美女・アレクサンドラに
いったい何があったのか・・・?



スウェーデンから、また傑作が!


昨日は職場の忘年会でした。
ほどよく乾いた刺身、たいへんコシのある肉、コロモが十二単衣のようなテンプラなどを堪能しました。
いずこも経費節減ですなあ・・・。


 それはさておき。


ついこのあいだ、スティーヴ・ラーソン「ミレニアム」を読んで
「すごいすごい」と騒いでいた私ですが、
今年はスウェーデン・ミステリの当たり年なのでしょうか、
この「氷姫」もじつに素晴らしいミステリでした。

なんというかキャラクターの描き方が深いですね。
端役にいたるまで、人生の重みを感じさせる重厚で生き生きした筆致。
でも重いだけではなく、エリカとパトリックの恋の駆け引き
威張り散らすしか能がない署長の頭髪問題などはコミカルに描かれ、
テンポよく読み進められます。

スウェーデンつながりでどうしても「ミレニアム」と比較してしまいます。
断言いたしますが「ミレニアム」に勝るとも劣らぬ大傑作です!

アクション・シーンを多用し社会問題をも正面からとりあげる「ミレニアム」に対し、
叙情と詩情をたたえた語り口で、「家庭の事件」を繊細に描く「氷姫」
ともに現代スウェーデン社会が透けて見えるのが興味深いですね。

読み終えて、アレクサンドラエリカと疎遠にならざるを得なかった心情、
他人との間に壁を作って「氷姫」となってしまった理由に思いをはせ、
しばし感傷にふけりました。

本国ではエリカ&パトリック・シリーズとしてすでに数作が発表され、いずれもベストセラー。
「あのマルティン・ベック・シリーズを超えた!」とまで言われているそうです。
もちろん本書だけでミステリとしてきちんと完結していますが、
エリカと義弟ルーカス(金の亡者でDV男)との対決や、エリカパトリックの恋の行方、
エリカのダイエットは成功するのか、などは
後の作品でじっくり展開されるのでしょう。

人間がしっかり描かれたミステリの良作です。
続きが楽しみなシリーズがまたひとつ増えてしまいました。
早く翻訳してくださーい!


それにしても、 
「このミステリーがすごい! 2010年版」 」で、この作品が完全に無視されてるのは納得いかないなあ〜。

(09.12.12.)

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