ドナ・W・クロス/女教皇ヨハンナ
(阪田由美子 訳  草思社 2005年)

女教皇ヨハンナ (上) 女教皇ヨハンナ (下)


9世紀なかごろ、女性のローマ教皇が存在したという「教皇ヨハンナ伝説」
以前、塩野七生「愛の年代記」で読んで、記憶に残っていました。
女であることを隠して教皇の地位まで登り詰めながら、妊娠してしまい、公衆の面前で突然出産、
出血多量で死亡という幕切れ、あまりにもドラマティックでした。
教皇庁は、ヨハンナはあくまでも伝説上の人物、という見解らしいです。
一方、本書の著者によると実在の証拠もいろいろあるそうで、非キリスト教徒としてはどっちでもよいのですが、
とりあえずこの小説は面白かったな。

いちおう、伝説として伝えられているヨハンナの生涯にできる限り忠実に書いているそうです。
もっとも、わかっていることはほとんどないようですが。
田舎町の聖堂参事会員の娘が、死んだ兄の身代わりとなって修道院にもぐりこみ、
生まれつきの聡明さと努力を武器に、司祭へ、司教へと昇進してゆきます。

ストーリーは、もう波乱万丈。
結婚式の最中に蛮族に襲われたり(これがきっかけで男をよそおうことに)、
陰謀に巻き込まれて地下牢に幽閉されたり、サラセン人の軍隊と戦ったり、
修道士時代に身につけた医学の知識で教皇の命を救ったり。

 韓流かっ!

と言いたくなるほど濃い展開で飽かせません。

いっぽう、恋人との恋愛模様は、ハーレクインリボンの騎士か。
ふたりで猛火をくぐりぬけるわ、洪水に巻き込まれるわ、文字通り火の中水の中。
もう、つっこみどころ満載ですが、面白いからいいや。

ただし、小説内で起こる大きな事件は、すべて史実に基づいているそうです。
時代考証も緻密で、9世紀のローマの雰囲気が、手にとるように伝わってきます。
それはローマ帝国時代に比べ、はるかに野蛮で暴力的な、混乱した社会。
塩野七生「ローマ人の物語」 を先日読み終えた私としては、ここまで衰退したローマ世界に少々悲しくなりました。

物語は、ヨハンナ以外にも、男性を装って男の社会で生きた女性が、歴史上何人かいたことも教えてくれました。
そういえば日本でもつい最近、「織田信長は女だった」という小説が出たよなあ・・・って、あれは絶対フィクションだって。

(07.7.7.)

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