伝ハイドン(ホフシュテッター)/弦楽四重奏曲集 作品3より第3〜6番
(コダーイ・カルテット)




Amazon.co.jp : ハイドン(ホフシュテッター)弦楽四重奏曲集 Op. 3 No. 3-6


ハイドン(1732〜1809)の弦楽四重奏曲が好きです。
親しみやすい、なにげない音楽ですが、聴いてるとリラックスでき、不思議に聴き飽きない。
確かな職人芸の手ごたえを感じさせる作品群です。
現在68曲が知られているハイドンの弦楽四重奏曲ですが、
それとは別に「鬼子」扱いされている作品が6曲あります。 それが作品3です。

作品3の6曲の四重奏曲は、1777年にパリでハイドンの名で出版され、それからもずーっとハイドンの作品と信じられていました。
しかし1939年、ラーセンという学者が、「こ、これ・・・ひょっとしてハイドンの曲ではないんじゃない?」
と言い出してから研究に火がついて、結局1965年ごろに「偽作」と結論されました。
ハイドンは生前から人気があり、「ハイドンの曲」として出版すると楽譜もよく売れたので、楽譜出版社が不届きなことをしたわけですね。
商品の不当表示が今に始まったのではないことがよくわかりますが、世界の音楽界が150年以上だまされてたのですから、ある意味たいしたもの。

本当の作曲者は、ロマン・ホフシュテッター(1742〜1815)という僧侶と考えられています。
アマチュア作曲家であり、ハイドンの大ファンだったそうです。
生前にいくつかの作品を発表しつつ、ドイツの田舎の僧院で貧しい一生を終えた人で、
この人の晩年の書簡を探し当てた学者によると、自分の作品がパリでハイドンの名で出版されていること、まったく知らなかった可能性が高いそうです。
気の毒ですね・・・ (案外、本人は天国で誇りに思っているかも)。

そんなわけでこの6曲、最近ではめったに録音されません。
作品3の5など、第2楽章が「ハイドンのセレナード」とよばれ、初期弦楽四重奏曲の代表作といわれていたのに・・・。

  ハイドン(ホフシュッテッター) :セレナード(作品3-5より) (聴いたことあるでしょ?!)
 (このCDの演奏ではありません)

今回、コダーイ四重奏団が、ハイドンの四重奏曲全集の一環としてこのディスクを録音しました。
CD時代に入ってからはおそらく初めての録音でしょう。
私も「セレナード」以外は聴いたことがありませんでしたから、じつにうれしいリリース。

さて聴いてみると、なかなか良いです。
軽やかで、天真爛漫的に明るい、楽しい陽性の曲ばかりです。
曲が良いから150年以上だませたんですから、「偽作」というだけで葬り去るには惜しいと思います。
もちろん白眉は「セレナード」
第2楽章アンダンテ・カンタービレの人懐こい、親しみやすいメロディ。 なごみます。

ハイドンの四重奏曲が好きな人なら、ぜひとも押さえておきたい必須アイテム。
そうでない方々にも、午後の紅茶でも飲みながらリラックスするときに、おすすめしたいです。

 ハイドン(ホフシュテッター)/弦楽四重奏曲 作品3-3 第1楽章 (なるほどたしかにいい曲だ・・・、もろハイドンです)
 



(02.10.6.記)

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