ガルッピ/25のハープシコード・ソナタ(4枚組)
(イラリオ・グレゴレット:ハープシコード)


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ヴィヴァルディより少し遅れてヴェネツィアで活躍した作曲家、バルダッサーレ・ガルッピBaldassare Galuppi、1706-1785)。
以前ハープシコード協奏曲集を聴いてみたら、予想を超える良い曲ばかりだったので、コーフン気味にご紹介したことがあります。

実際ガルッピは、聖マルコ寺院主席楽長という、ヴェネツィア音楽界最高の地位に君臨した偉い人、タダモノではないのです。
当時ヴェネツィアを代表する音楽家といえば、ヴィヴァルディではなくガルッピだったそう。

100曲以上のオペラ、20曲以上のオラトリオなどで絶大な人気を誇り、ハープシコード・ソナタも大量に残しました。
その数80曲とも130曲とも。
しかし当時の作曲家って、信じられないほど多作ですね。
録音技術がないのを良いことに、アリアとかは同じ曲を何度も使いまわしていたのでは?(←根拠はありません)


まあそれはそれとしてガルッピハープシコード・ソナタ、美しい作品が鈴なりです。
チャーミングでメルヘンチック、お花畑でオルゴールを鳴らしているような、少女趣味紙一重的世界。
こんなに可愛らしい曲ばかり、よくもまあ何十曲も書き続けたものです。
ソナタ業界における中原淳一と呼びたくなります。
高度な技巧が必要な曲は少なく(いや私は弾けませんが)、シンプルでスマートですが、内容は意外と深いです。
しかもスカルラッティともハイドンともモーツァルトとも違うガルッピ独自の個性が、どの曲からも強烈に発散されています。
前古典派の作曲家の曲はどれを聴いても同じに聴こえることで定評がありますから、この個性は貴重。
優美で可憐ながら大胆な転調があったり、バロック・スタイルと古典派スタイルが随所で混在しているのも興味深い。
基本的に3楽章からなりますが、なじみの急・緩・急パターンとは異なり、
最初にゆっくりした楽章を置き、第2楽章・第3楽章と徐々にテンポを速めて終わる楽章構成が多いことも特徴。
モーツァルト「トルコ行進曲ソナタ」ベートーヴェン「月光ソナタ」は、ガルッピへのオマージュである・・・なんてことはないのかな 
(じつはモーツァルトはガルッピのソナタに親しんでいたことがわかっているそうです)。

 ガルッピ/ソナタ ハ長調 (ただひたすらに可憐)
 

このアルバムは、ガルッピのソナタを25曲、CD4枚にわたって収録したもの。
さすがにこれだけ立て続けに聴くと「もうええわ!」と言いたくならなくもないですが、
どの曲も優雅な抒情と自由な躍動が感じられ、最初から最後まで魅力的なセットでした。

 ガルッピ/ソナタ ハ短調 (甘い哀愁を含んだ軽やかなソナタ)
 

(2014.10.24.)

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