ペッテション=ベリエル/フローセの花々
(小川典子:ピアノ 1998)



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スウェーデンの作曲家、ウィルヘルム・ペッテション=ベリエル(Wilhelm Peterson=Berger, 1867〜1942)の「フローセの花々」(1896〜1914)は、
胸キュンものの可憐な音楽がぎっしり詰まった、3集21曲からなるピアノ曲集です。

フローセとはスウェーデン中部の山岳地帯にあるストゥール湖に浮かぶ島。
ペッテション=ベリエル(以下PB)はフローセ島の自然をこよなく愛し、たびたび訪問、その後別荘を建て、ついには定住。
1942年12月にエステサンドの病院で逝去しますが、病室の窓からは遠くフローセ島を望むことができたといいます。

 第1集 第1曲「再訪」 (夏のフローセを再訪したPBの幸福感と心の高鳴り)
 

1895年からスウェーデンの大手新聞社の音楽評論家としても活動、
容赦ない毒舌で読者からは人気でしたが、音楽家からは恐れられ、忌み嫌われました。
ワーグナーとグリーグを好み、同国人であるアルヴェーンやステンハンマルを酷評したそうです。
とくにシベリウスを目の敵にしていて、シベリウスがスウェーデンに自作を指揮しに行きたがらなかったのはPBのせいだと言われています。

さぞかし友達少なかったろうと思いますが、書く音楽はこんなにも可憐で人懐っこいんだから不思議です。

 第1集 第2曲「夏の歌」 (花咲き乱れる草原を足取り軽やかに散策するPB氏)
 

魅力的なメロディ、澄んだ響き、どの曲もじつに耳なじみがよく、前衛的なところは皆無。
19世紀末〜20世紀にかけて書かれた曲としてはやや保守的と言わざるを得ません。
同時代の先進的な音楽を酷評したのも分かる気がしますが、それにしても綺麗な曲ばっかりです〜。

 第1集 第6曲「フローセの教会にて」 (静かで厳かな教会のたたずまい)
 

メロディは北欧風で親しみやすく、グリーグに近いものを感じます。
というかグリーグの抒情小曲集を連想せずにはいられないほど。

 第2集 第1曲「お日様への挨拶」 (明るく爽やかな旋律。本当にメロディセンスいいですね、この人)
 

PBは1914年にフローセ島に別荘を建て「ソンマルハーゲン」(夏の庭園)と名付けます。
1930年には新聞社を辞め、ストックホルムからフローセ島に完全移住しました。

 第3集 第2曲「ソンマルハーゲンに入居して」 (期待と喜びに胸が高鳴る様子がほほえましいです)
 

 ソンマルハーゲン
 

後年、オペラ歌手のユッジ・ビョルリング(1911〜60)がフローセ島のPBを訪問しました。
PB氏は批評家時代にはビョルリングに対して手厳しい批評を一度ならず書きましたが、
ビョルリングを大歓待、数日の滞在中ふたりで大酒食らって盛り上がったそうです
(なおビョルリング氏は酒の飲みすぎが一因となり早死にしました・・・)。

知られざる曲のわりにCDはいろいろ出ていますが、ここはやはり日本を代表するピアニストのひとり小川典子の演奏で。

(2023.01.14.)


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