フェリシア・ブルメンタール/珍しいピアノ協奏曲シリーズ(全12枚)



フェリシア・ブルメンタール独奏による珍しいピアノ協奏曲シリーズ全12枚を、数年がかりで揃えました!
Durecoというオランダのマイナー・レーベルなので、なかなか苦労しました。

フェリシア・ブルメンタール(Felicja Blumental, 1908〜91)は、ポーランドのピアニスト。
ヴァイオリニストの父を持ち、ワルシャワ音楽院でショパン・コンクールの創設者であるズビグニェフ・ジェヴィツキにピアノを学び、
カロル・シマノフスキに作曲を学ぶというエリート・コースを歩みました。
しかし欧州でナチスが台頭、ユダヤ人であった彼女は1938年、夫の画家マルクス・ミツネとともにブラジルに移住します。
ブラジルでも活躍し、ヴィラ=ロボスは彼女にピアノ協奏曲第5番を献呈しました。
戦後は世界的に演奏活動を行い、1962年にミラノ、1973年にロンドンに移住し、1991年演奏旅行中にイスラエルで客死しました。
メジャー・レーベルと契約しなかったためか日本ではあまり知られていませんが、とても素晴らしいピアニストだと思います。
バロック、古典派、ロマン派から現代音楽まで驚異的なレパートリーの広さを誇り、演奏はどれも上質で香り高いです。
このシリーズは珍しいピアノ協奏曲ばかりで、珍曲好きにはたまりません。
これが世界初録音という曲も多く、いまだに唯一の録音である曲も少なくなさそう。

 CD1 ツェルニー:ピアノ協奏曲イ短調、ハイドンの主題による変奏曲
 CD2 プラッティ:ピアノ協奏曲第1&2番、 クーラウ:ピアノ協奏曲
 CD3 アルベニス:ピアノ協奏曲第1番、 ヴィラ=ロボス:ピアノ協奏曲第5番
 CD4 リパッティ:古典的様式による協奏曲、ピアノと管弦楽のためのルーマニア・ダンス、 リスト/ブゾーニ:スペイン狂詩曲
 CD5 パデレフスキ:ピアノ協奏曲イ短調、幻想的ポロネーズ
 CD6 コジェルフ:ピアノ協奏曲ニ長調、 シュターミッツ:ピアノ協奏曲ヘ長調
 CD7 ホフマイスター:ピアノ協奏曲ニ長調、 フォーグラー:ピアノと管弦楽のための変奏曲
 CD8 リース:ピアノ協奏曲第3盤、 ベートーヴェン:ピアノ協奏曲(習作)
 CD9 ヴィオッティ:ピアノ協奏曲ト短調、 マンフレディーニ:ピアノ協奏曲変ロ長調
 CD10 フィールド:ピアノ協奏曲変ホ長調、 クレメンティ:ピアノ協奏曲ハ長調
 CD11 パイジェッロ:ピアノ協奏曲ヘ長調&ハ長調
 CD12 ルビンシュタイン:ピアノ小協奏曲、 アレンスキー:ピアノ協奏曲第2番

色彩あざやかなジャケットはすべて夫である画家マルクス・ミツネの抽象画。
また12枚並べると背表紙が、友人・藤田嗣治が描いたフェリシアの素描になります。
配信音源では味わえない楽しみですが、コレクター魂をあおるアブナイ仕掛けでもあります(まんまとはまったカモがここに)。

 

知られざる曲ばかりですが、どれも素敵です。
フェリシアが弾くと、みな名曲になってしまうのでしょうか。
1960〜70年代の録音ですが、粒立ちの良いピアノの音が心地良いです

 プラッティ:ピアノ協奏曲第2番ハ短調 第3楽章 アレグロ (端正な古典派協奏曲、ちょっとバロックっぽい雰囲気がお洒落。)
 

 シュターミッツ:ピアノ協奏曲ヘ長調 第2楽章 アンダンテ・モデラート (ソロ・ヴァイオリンとの優美な対話。詩情あふれるピアノに魅了されます)
 

 ヴィラ=ロボス:ピアノ協奏曲第5番 第3楽章 アレグレット・スケルツァンド (現代曲もこの通り、テクニックの切れ味はさすが)
 

 パデレフスキ:ピアノ協奏曲イ短調 第1楽章 アレグロ (圧倒的名演。祖国の英雄の傑作を自信満々で弾ききっています)
 

なおフェリシアはメジャーな協奏曲もたくさん録音しています。
モーツァルト、ベートーヴェン、ショパン、シューマン、グリーグ、チャイコフスキー、ラフマニノフ・・・(ほとんどYou Tubeで聴くことができます)。
なんでも60曲以上のピアノ協奏曲を手の内に入れていたそうです。

現代曲にも積極的で、ペンデレツキは彼女に「管弦楽とハープシコードのためのパルティータ」を献呈しました。

(2023.02.11.)

藤田嗣治によるフェリシアの肖像画


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