アニエス・ヴァルダ監督/5時から7時までのクレオ(1961)



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シャンソン歌手のクレオは最近体調が悪く、病院で癌を疑われ検査を受けた。
午後7時には病院から結果を知らせる電話がかかってくる。
自宅にいたたまれず、パリの街中をあてどなく彷徨うクレオ。
彼女は友人や見知らぬ人と出逢いながら、生について、死について考えを巡らせる。


2019年は、ヌーヴェルバーグの立役者がたくさん亡くなった年となりました。

 ミシェル・ルグラン(1932〜2019)

 アニエス・ヴァルダ(1928〜2019)

 アンナ・カリーナ(1940〜2019)

まさにヌーヴェルバーグを代表する3人ですが、彼らが一堂に会した映画が一本だけあります (この3人が同じ年に亡くなるとは思わなかったな・・・)。

 アニエス・ヴァルダ監督/5時から7時までのクレオ(1961)

といっても主演はコリンヌ・マルシャン(1937〜)です、この方は御存命ですので念のため。
偶然にも「死」をテーマにした映画ですが、過度に深刻にならず、むしろオシャレなタッチで深い内容を表現する巧みな映画術。

舞台は夏至の日のパリ、 タイトルは「5時から7時」ですが、実質的には「5時から6時半まで」。
癌を疑われた若い歌手クレオの午後5時から6時半までの90分を描いた90分の映画です。
映画内の時間の流れを現実の時間と一致させる試みでも有名な作品です。

Trailer


ミシェル・ルグランは映画の音楽を担当するだけでなくクレオに曲を提供する音楽家役でも登場、ピアノを弾き、達者な歌を聴かせます。
しかし検査結果に気が気でないクレオはルグランに当り散らしたあげく独りパリの街へ出てゆきます。
ルグラン、気の毒・・・。



アンナ・カリーナは、クレオが訪ねる友人の映像作家が作った無声映画の登場人物としてジャン・リュック・ゴダール(1930〜)とともに登場します。
お人形みたいに白塗りにしているので、言われなければカリーナとゴダールとはわかりません。
なおこのふたり新婚ほやほやです(1965年に離婚)。
この無声映画はナンセンス・コメディの体をとっていますが、映画のテーマに合わせてかどことなく死の気配をただよわせています。
ところで、ゴダールってまだ生きているんですね・・・(2019年現在89歳)。



死の予感を振り切るようにあてどなくパリを彷徨うクレオは、午後6時過ぎ、公園で若い男にナンパされます (さすがはフランス人・・・)。
最初はすげなくしていたクレオですが、男は休暇中の兵士で、夜になれば戦地アルジェリア行きの便に乗る身であることを知ります。

 クレオ「今の大きな恐怖は死なの」
 兵士「アルジェリアは恐怖でいっぱいです。(中略)無駄死にはしたくない。戦死なんて情けない。僕は女のため、恋のために死にたい」
(さすがはフランス人・・・)

自分以上に死に直面しているのかもしれない兵士に出会うことで、運命と向き合う決意を固めたクレオ。
病院からの電話を待つのではなく、直接結果を訊きにゆこうと兵士とともに病院におもむきます。
しかし主治医の所在が分からず、仕方なく病院前のベンチに座っていると医者の乗った車が偶然通りかかります。

 「そう心配はいりません、放射線治療は少々きついが、必ず治ります。明日11時に処置を指示します」

軽〜い口調で告げて走りさる医師。
い、いいの、こんな軽いノリで?
でも放射線治療ってことは癌ですよね・・・。
しかしクレオは、

 「わたしもう怖くないようよ、何か幸福な感じよ」

と、ふっきれたような笑みを浮かべて映画は終わります。

地味と言えば地味ですが、なんとも言えない印象を残す、不思議な映画です。

(2019.12.21.)


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