シューマン/交響曲第2番 ハ長調 作品61
(レナード・バーンスタイン指揮 ウィーン・フィル 1984録音)
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親分:レナード・バーンスタイン(1918〜1990)って、今年生誕100年なんだな。
ガラッ八:20世紀アメリカが生んだ名指揮者でピアニストで作曲家ですね。
親分:作曲した作品で一番有名なのは、「ウエスト・サイド・ストーリー」かな。
ガラッ八:最近ズボンのベルトが合わなくなってきたって話ですね。
親分:「ウエストサイズ・ストーリー」じゃねえよ!
ガラッ八:これは失礼、親分の腹部を見ていたら、勘違いしました。
親分:勘違いの理由がさらに失礼だ!
親分:指揮者としてのバーンスタインがとくに好んだ作品が、シューマンの交響曲第2番。
コンサートでも何度か取り上げ、死の直前には日本でPMFオーケストラを振っている。
つまりバーンスタインが日本で最後に演奏したのはこの曲なんだ。
ニューヨーク・フィルとウィーン・フィルを相手に2回、正式に録音もしている。
ガラッ八:録音だけに、この曲にロックオンしたわけですか。
親分:じつはシューマンの4つの交響曲の中で最も地味というか、演奏機会が少ないのが第2番だ。
ややとらえどころのない曲で、たとえば第1楽章では長い序奏に続いて3:55から始まる第一主題は印象に残りにくいし、第二主題(4:38〜)もインパクトに欠ける。
序奏つきソナタ形式として整然とまとまっていて威勢もいいが、聴きどころはどこかと言われると困っちまうな。
親分:第2楽章スケルツォはちょっと洒落てて悪くないな、メンデルスゾーンの影響が強く感じられるよ。
しかし、メンデルスゾーンに比べると野暮ったい感は否めない。
親分:第3楽章アダージョ・エスプレッシーヴォは抒情的で透明感があって、この交響曲で一番好きな楽章。
しかし際立った名旋律が登場するわけでもなく、響きの変化にも乏しいので途中でちょっと飽きてくる。
ガラッ八:たしかにちょっと眠くなってくるでやんす。
親分:第3楽章がやさしく、消え入るように終わったと思うと、唐突に力強く第4楽章フィナーレがはじまる。
金管がパッパカパ〜とファンファーレを奏で、冒頭からもうお祭り騒ぎ、前の楽章とのギャップが消化しきれなくて、思わずめまいがする。
ガラッ八:たしかに、第3楽章との落差が激しいでやんすね。
親分:この時期、シューマンは精神的に不安定だったらしく、躁鬱病的な印象も受ける。
とくに第4楽章はソナタ形式でもロンド形式でもなく、これまでの楽章の素材を消化しながら猪突猛進・狂喜乱舞でイケイケドンドン、
ひたすら盛り上がってゴールになだれ込むんだが、意地悪く言うと「から騒ぎ」っぽい感じがぬぐえないんだな。
ガラッ八:はあ〜、なんかひどい言いようですね。
つまり親分的にはこの曲、好きじゃないんですね。
親分:いや、けっこう好きだぞ。
ガラッ八:へっ?
親分:作品としては欠点が多く、「未完成品」っぽい感じなのは事実。
しかし楽譜を見れば、シューマンがこの曲にこめた熱意と努力と情熱はビンビンに感じとれる。
それだけに指揮者としては「オレの技術と腕で聴きごたえのある音楽にしてやるぜ!」と、意欲をかき立てられるらしい。
田舎から出てきた地味な娘に都会の男が洗練を教え込んでレディに仕立て上げる「プリティ・ウーマン」みたいな欲求にかられる曲なのかもな。
ガラッ八:綺麗なドレスを着た娘が鏡を見て「こ、これが私・・・?」とつぶやく少女漫画でお約束の展開すね。
親分:グスタフ・マーラーにいたっては、この曲を指揮するにあたって楽譜を大胆に改訂、いたるところで楽器編成を変え、音符を増やしたり減らしたりしたうえ、
終楽章に大胆なカットを施し、改訂というより「添削」してしまった。
ガラッ八:整形手術をしちゃったようなものですね。
親分:もちろんバーンスタインをはじめとする現代の指揮者は、シューマンのスコアをそのまま生かしながら、いかに説得力ある音楽を作り上げるかに努力している。
いわば指揮者の腕前がはっきりわかる、面白く興味深い曲ってわけだ。
ガラッ八:なるほど〜、ある意味怖い曲でもありますね。
親分:この曲をコンサートで取りあげる指揮者は、自分の指揮力・表現力に自信を持っていると言えるかも知れないな。
ガラッ八:で、バーンスタインの演奏はどうなんで?
親分:この曲の情熱的な面に共感した、熱い演奏だ。
たっぷりタメを聴かせたフレージング、ウィーン・フィルの艶やかな音色を駆使、この曲の屈指の名演奏なんじゃないかな。
シューマン/交響曲全集(2枚組)として売られているが、どの曲もサイコーに素晴らしいので、
シューマンの交響曲をはじめて聴くなら、とりあえずバーンスタインで間違いないと思うよ。
ガラッ八:よーし、週末はシューマイでも食べながらシューマン聴くでやんす!
(2018.10.01.)
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