ジョナサン・ホルト/カルニヴィア 1 .禁忌
(奥村章子・訳 ハヤカワ・ミステリ 2013年)



Amazon.co.jp : カルニヴィア 1 禁忌 (ハヤカワ・ミステリ 1875)

<ストーリー>
ヴェネツィアの教会の石段で、女性の死体が発見された。
死体は女性には許されないカトリック司祭の祭服をまとっていた。
殺人事件を初めて担当する憲兵隊女性大尉カテリーナ・ターポは、張り切って捜査開始。
その頃、イタリア米軍基地の女性少尉ホリー・ボランドは、ある女性からの旧ユーゴ内戦の情報公開請求に対応。
ホリーが内戦の記録を収集し始めた矢先、その女性は殺害される。
二つの事件はひとつに交錯し、カテリーナとホリーは協力体制をとる。
事件の手がかりはソーシャル・ネットワーク・システム「カルニヴィア」にあると気づいた二人は、
「カルニヴィア」創設者ダニエーレ・バルボとともに、女性たちの死に潜む陰謀に迫る。
水上都市ヴェネツィアを舞台にしたミステリ大作、開幕


タイトルが覚えにくい。

読み終えたあと思い出そうとしても、

 「カニリヴィア」? いや「カリニヴィア」だっけ? あ、「カニルヴィア」か?

わけわからなくなるんです。
正解は、

 ジョナサン・ホルト/カルニヴィア 1 禁忌

もっともこれは「邦題」(?)であり、原題は"The Abomination"
「忌まわしきもの」という意味だそうですが、覚えにくさではいい勝負。
ただでさえ記憶力に自信がなくなってきた頃だけに、自分のアタマが不安になります。
最近は、昨日の晩食べたものもなかなか思い出せず、ニョウボに睨みつけられるんです(コワイ)

「カルニヴィア」とは作中に登場するSNSの名前で、そこではヴェネツィアの街が忠実に再現され、
参加者は完全な匿名性に守られながらヴァーチャル・ヴェネティアで生活できるんだとか。
つってもmixiFACABOOKLINEツイッターブログもやらないネアンデルタール人のような私にはよくわからん世界。

 よくわからんですが、とにかくこの小説は面白かったです!
 中盤からはもう一気読み!

「ミレニアム」「ダ・ヴィンチ・コード」を足して2で割った雰囲気。
魅力的なキャラクター、二転三転するプロット、誰が敵か味方かわからないサスペンス、
女性コンビ大活躍のアクション・シーン(←チャーリーズ・エンジェルみたい)など、読み応えたっぷり。
事件の背景となるユーゴ内戦の史実は重く悲惨ですが、
こうしてエンタテインメントとして幅広く読んでもらうことで、ドキュメンタリーより多くの人々に問題提起されるかも。
実際私も、こんな恐ろしいことが行われていたとは知りませんでした。

著者のジョナサン・ホルトは、オックスフォードで英文学を専攻し、現在は広告会社でディレクターとして勤務、
作家としてはこれがデビュー作だそうです。
ベテラン作家も裸足で逃げ出す手慣れた筆致、ストーリー・テリングの巧さにはただ感嘆するのみ。

「ミレニアム」に倣ってか、三部作になる予定らしいです。
とはいえ、あの狸親父はそもそも何を企んでいるんだとか、「カルニヴィア」にはまだ隠された秘密あるでしょとか、
適度な謎を謎を残しながらも、この1冊で一応区切りがついてますから大丈夫。
カテリーナ、ホリー、ダニエーレの女性上位3人組の今後の活躍、楽しみです。

(2013.10.9.)

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