亀山郁夫/「カラマーゾフの兄弟」続編を空想する
(光文社新書 2007年)



Amazon.co.jp : 「カラマーゾフの兄弟」続編を空想する (光文社新書 319)


ガラッ八:あれ、親分、また「カラマーゾフ」読んでるんですか?
  たしかこないだ、「うぉー、完読ー!」って雄叫びをあげてたじゃないですか。

親分:おれは野生のオオカミか何かか。
  これはまた別なんだよ。
  「カラマーゾフの兄弟」新訳者の亀山郁夫さんが、「カラ兄」の続きを空想した本だ。

八:続きを空想、ですかい・・・?

親:もともと「カラ兄」は、著者まえがきにも書かれているが、二つの小説からなる大長編として構想された。
  「重要なのは第二の小説であり、これは、すでに現代、つまり現に今の時代における私の主人公の行動である。
  しかるに第一の小説は、すでに十三年も前に起こった出来事であり、これはもう小説というより、
  主人公の青春のひとコマを描いたものにすぎない。」
(光文社古典新訳文庫「カラマーゾフの兄弟」第1巻11ページ)

八:プロローグ+本編ってわけですね。

親:ところが、ドフトエフスキーは、「第一の小説」の完成後わずか2ヶ月で急死、
  「第二の小説」は一行も書かれることはなかったのだ。

八:えーっ、するってえと、いま「カラマーゾフの兄弟」として読まれてるのは、いわばプロローグってわけで?

親:そういうことになるな。

八:プロローグだけでも分厚い文庫本5冊・・・いやあー、長生きしなくてよかったっすねえ!

親:バチ当たりな事を言うんじゃねえ!!
  とにかく「第二の小説」に関しては、下書きもメモも何一つ残っていないんだが、
  「第一の小説」中に張られた伏線を読みこんだり、ドフトエフスキーが妻や知人に語ったことを分析したりして、
  「第二の小説」のストーリーを作り上げてみたのがこの本だ。

八:「ドラえもん」の最終回や、「サイボーグ009」の完結編を作るのと同じノリですね。

親:うーむ、そういうことになるかな・・・。
  わずかな手がかりから、「第二の小説」の展開を推理していく過程はスリリングで、
  よくできたミステリの解決編を読んでいるような気分だ。
  とくに、当時のロシアの政治・社会情勢や、ドフトエフスキーの心理状態まで踏まえて
  「彼ならこう書いたはずだ」と推論を進めていくところは、さすがに専門家。
  最後には「カラ兄」をもう一度読み返したくなる。

八:そ、それはアブナイですね・・・。

親:「第一の小説」ではまだ幼く、脇役だったリーザコーリャが、主役級の活躍をみせるのが、ワクワクものだったなあ。
  とにかく絶対面白い! 「カラ兄」を読破したなら、次はぜひこれを!

八:あっしはまずは「カラ兄」を読まなくちゃですね。
  それにしても誰か「ガラスの仮面」の完結編を描いてくれませんかねえ・・・。

親:美内すずえはまだ生きてるぞー!!(しかしこいつマンガばっかし・・・) 

(07.9.22.)


「本の感想小屋」へ

「整理戸棚」へ

「更新履歴」へ

HOMEへ