ツェムリンスキー/抒情交響曲 ほか
(ミヒャエル・ギーレン指揮 南西ドイツ放送交響楽団
ヴラトゥカ・オルザニック:ソプラノ ジェームズ・ジョンソン:バリトン)



Amazon.co.jp : Zemlinsky/Berg: Lyric Symphony


「20世紀3大後期ロマン派諸行無常的耽美的東洋趣味的声楽つき交響曲」


ってご存知ですか?
まあ私が勝手に言ってるだけなんですが、

 マーラー「大地の歌」(1908)

 シマノフスキ「交響曲第3番・夜の歌」(1916)

 ツェムリンスキー「抒情交響曲」(1923)


「大地の歌」
の歌詞は李白や王維の詩、「夜の歌」はペルシャの詩人ルーミーの詩。
そしてツェムリンスキー「抒情交響曲」は、インドの詩人ダゴールの恋愛詩が用いられています。

アレクサンダー・ツェムリンスキー(1871〜1942)は、6歳年上のグスタフ・マーラーを尊敬というか崇拝していました。
マーラーはツェムリンスキーの歌劇「昔あるとき」(1900)をウィーン宮廷劇場で初演し大成功。
おかげでツェムリンスキーは作曲家としての地位を固めることができました。

 作曲の先輩であると同時に恩人でもあったわけです。

さてツェムリンスキーにはアルマ・シントラーという音楽を志す若き女性の弟子がいました。
めっちゃ美人で才気煥発、音楽の才能もホンモノで、ツェムリンスキーはすっかり彼女のとりこに。
アルマのほうも気のあるそぶりを見せたりして、ツェムリンスキー超幸せ! と思ってたら、
なんとマーラーがアルマに求婚、1902年に彼女はアルマ・マーラーになってしまいます。

 

左側から撮った写真が圧倒的に多いアルマです


この出来事を、ツェムリンスキーは終生忘れなかったそうです(そりゃ忘れられんわ)。
マーラーにたいしても愛憎半ばする感情を抱いたことでしょう。

「抒情交響曲」は、マーラーの「大地の歌」を下敷きに書かれ、バリトンとソプラノが1楽章ずつ交代で歌う、7楽章の音楽。
愛への憧れと成就、そして別離が歌われますが、男女は恋を語らいながらもつねに別々、(「大地の歌」と同じく)一緒に歌うことはありません。


抒情交響曲・第1楽章(バリトン独唱)は、このような内容

  心の安らぎが得られない
  我は自分の心の中のさまよい人
  おぼろげな時の明かりに照らされた霧の中
  青い空に照らし出される君のまぼろしの なんと大きなことか

カンフー映画のオープニングテーマのような冒頭は、とても印象的というか笑っちゃうくらい東洋的。

 

その後第2・3楽章で男女はめぐり合い、一目出会ったその日から恋の花咲くこともある(古い)ってことになりまして、
ソプラノが儚く歌う第4楽章、どこまでも甘美で妖艶で官能的。

  私は髪を解きましょう
  私の青いマントが夜のようにあなたを包み込むでしょう
  私はあなたの頭を胸にしっかり抱きしめましょう
  そしてやさしい孤独の中で あなたの心を静かに語ってください
  私は目を閉じて じっと聞いているから あなたの顔は見ないから
  あなたの言葉が途切れても 静かに 黙って座っていましょう
  そのうちに夜が明ける 日が昇るでしょう
  私たちはお互いに見つめ合い それぞれの道を行くでしょう

 

バリトンによる激しくも短い第5楽章、いかにもマーラー的。

  恋人よ 君の甘い愛の鎖から解放してくれ!
  流れるワインのような口づけは 私を窒息させる
  扉を開けておくれ 朝の光を妨げないでおくれ
  私は君の優しさに 抱かれ 囚われ わが心を失った
  君の魔力から解放しておくれ
  そして自由になった心を 君に捧げる勇気を与えておくれ

 

そして第6楽章ではソプラノが

  最後の歌が終わったら 別れましょう
  夜が明けたら 今夜のことは忘れましょう
  この腕に抱いた人は いったい誰だったのかしら?
  夢は捕まえられないもの
  愛を求めるこの手は 虚しさを抱きしめ 心を痛めつける

 

さいごの第7楽章(バリトン)

  わが心に平和あれ 別れが穏やかであるように 
  別れが死ではなく 成就となるように
  愛は想い出に 傷ついた思いは歌に
  最後のきみの手の温もりは 夜の花のように優しくあってほしい
  美しき愛の終わりよ しばしとどまれ 最後の言葉を沈黙のうちに語れ
  私はひざまずき 君の歩む道を照らすために 灯をかかげよう

 

朝の光の中に溶けてゆくように、静かに曲は閉じられますが・・・


 ・・・いや君たちなんで別れるのん?

相性めっちゃ良さそうやん、そのまま付き合うたらええやん、いっそ結婚したらええやん、
と関西弁で突っ込みたくなるのは私だけでしょうか。

というわけで歌詞はちょっと納得いきませんが音楽的には実にすばらしく、耽美で濃厚で妖艶で爛熟。
無調や復調も駆使してますが、響きはあくまでもマーラーの延長線上、気持ちよく聴けます。
秋の夜長にじっくり聴くのにふさわしい名曲です。

(2017.10.20.)

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