芥川也寸志の世界(映画音楽集)
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2025年は作曲家・芥川也寸志の生誕100年。
100本以上の映画の音楽を担当した映画音楽作曲家でもあります。
代表作は「八甲田山」「八つ墓村」など・・・しかし他にも素晴らしい作品がたくさんあります。。
このCDは芥川也寸志の映画サントラから13作を選んだベスト盤。
道産子(1958)
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「どんな文藝大作だよ!」と言いたくなる威風堂々たるテーマ曲。
後半でピアノが登場するところなんてもう・・・。
北海道を舞台に少年と競走馬の絆を描いた映画とのこと。
素晴らしく気品があります、すでにして大作曲家じゃん芥川(←何様)。
ゼロの焦点(1961)
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ご存じ松本清張の名作。
いかにも「サスペンス劇場でございます」の雰囲気ですが昭和36年ですからね、むしろこっちが原形なのか。
重厚な弦の響きに哀愁のアコーディオン。
緊迫感と浪漫の融合が麗しすぎて胸キュンです。
雪之丞変化(1963)
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大作娯楽時代劇。 「和」の雰囲気がいいですね。
高音弦の保続音は明らかに笙を意識している一方で、フルート・ソロはどこかジャズっぽい。
監督は市川崑、キャストは長谷川一夫、山本富士子、若尾文子、市川雷蔵、勝新太郎、船越英二・・・と眩暈がするほどの豪華さ。
これは観てみたいですね。
雪之丞変化・予告編
五辨の椿(1964)
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山本周五郎の傑作小説の映画化。原作は読んだことあります。
父親の仇のため、五人の男を次々と手にかけてゆくうら若き娘。
現場に残される紅い椿の花びら一枚。
岩下志麻(当時23歳)の美しき復讐鬼ぶりが凄絶とのことで、この映画も観てみたいですね。
柔らかく艶のある旋律は魅力的で、音楽的にはそれほど「和」に寄せず「ロマンティック・サスペンス」のムードを醸し出しています。
波影(1965)
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隠れた名曲。
どんな映画かは知りませんが、翳りをおびたメロディからはみずみずしい抒情がこぼれんばかり。
グロッケンシュピーゲルやハープによる上品な味付けも効いています。
八甲田山(1977) メインタイトル
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言わずと知れた大ヒット映画ですが、私は寒いのが苦手なので見ていません。
有名な「メインタイトル」は童謡「月の砂漠」のパク・・・オマージュであることを作曲者自身が述べています。
荒涼とした大地をひたすら歩くイメージが共通していることから思いついたそうです。
八つ墓村(1977) 呪われた血の終焉(落ち武者のテーマ)
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作曲者が好んだオスティナート技法(ひとつの旋律を繰り返し続ける手法)の好例。
主題をラヴェルのボレロのように繰り返しながら盛り上がります。
私は単純なので、一緒に「うお〜っ」と盛り上がってしまいます。
なお芥川也寸志はこの映画で日本アカデミー賞・音楽賞を受賞しています。
鬼畜(1978) メインタイトル
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ストリート・オルガンを使った軽快で楽し気なメインテーマ。
しかし映画は親による子殺しという凄惨な内容で、強烈なコントラストを感じさせるのが狙いでしょう。
そう思って聴くとこのメロディ、ちょっと怖い。
そして、現代でも親による子供の虐待死が決して珍しくないことを考えるとさらに怖い。
鬼畜(1978) エンディング
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エンディングでは同じメロディがオルゴールで奏でられ、哀愁たっぷりのストリングスが続きます。
これも日本アカデミー賞音楽賞受賞作品です。
芥川也寸志の映画音楽を堪能できる名盤。
とにかくメロディの美しさ、根っから「メロディ」の人だったのだなと痛感します。
残念なのは2025年現在、廃盤・入手困難であることです・・・(スミマセン)。
(2025.10.04.)
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