椎名林檎/唄ひ手冥利〜其ノ壱



(見、見にくい・・・・)
Amazon.co.jp : 唄ひ手冥利~其の壱~


椎名林檎、久々の新作(1年2ヶ月くらい?)、2枚組カバー集です。
林檎嬢のカバーといえば、ユーミンのトリビュート・アルバム「Dear Yuming」(ソニー SRCL 4649)(1999年)の中の、
「翳りゆく部屋が、忘れられません。
あのアルバム中で唯一、オリジナル・ヴァージョンを超えてました。
オリジナル・ヴァージョンの、絵空事・奇麗事っぽい雰囲気をざっくり切り裂いて血が吹きだしてきたようなのが林檎ヴァージョンでした。
このひとは、「言霊」ならぬ「曲霊」にとりつかれている、と思ったもんです。

さて、この「唄ひ手冥利」、白いほう(亀ディスク)から聴きはじめました。
1曲目「灰色の瞳」、いきなり情念ヴォーカルが炸裂です。
加藤登紀子のオリジナル・ヴァージョンは聴いたことがないのですが、これはいい、と思いました。
次が「more」。面白い選曲ですが、サラサラと歌う林檎嬢にアレッという感じ。
英語詞には感情が込めにくいのかな。でも歌はうまいですね。
素直な歌い方なので、ヴォーカリストとしての実力が伝わってくるようです。

全体に、日本語の歌は感情を込めて泥臭く歌い、外国語の歌はいろんな歌い方を楽しんでいるという印象です。
例外は、ジャニス・イアン「Love Is Blind」
林檎嬢自身、「ジャニス・イアンを自らと思い込んでいた(シドと白昼夢)」ほどの人ですから、
この曲に対する思い入れが半端じゃないことを、ひしひしと感じさせる歌いっぷリ。
しっかり鬼気迫ってます。
しかしこの人、70年代が全盛期だったジャニス・イアンのファンに、いつなったんでしょう?

もう1枚の黒いほう(森ディスク)は、全曲外国語詞。
60〜70年代のスタンダード・ナンバーを中心とした選曲で、落ち着いた雰囲気です。
「枯葉」は、かなりピアフを意識した歌い方、
カーペンターズの「I Won't Last a Day Without You」も、カレン・カーペンターぽい声を意識的に作ってるような(?)。
とにかく、余裕を持って楽しそうにいろいろ演っています。
こういうのを良しとするか、林檎っぽい毒が無くてもの足りないと思うか、好みが分かれるところですが、私はけっこう楽しみました。

それにしても選曲は椎名林檎自身によるものなのでしょうが、渋いですね。
とても23歳の趣味とは思えない・・・
10代20代の人は、知らない曲のほうが多いのではないでしょうか?
ただこの2枚組は、椎名林檎としてはあくまでも番外編。
オリジナル作品にも期待したいところです。

(02.6.2.記)


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