山本幸久/床屋さんへちょっと
(2009年 集英社)



Amazon.co.jp : 床屋さんへちょっと


「このさきなにが起こるかはわからない。
その不安に打ち勝つためにはいまをがんばるしかない」

(150ページ)


一昨日(3月13日)は、コレギウム・ムジクム高松という団体の演奏会に行きました(知人が出演するので)
バッハのカンタータ4曲と、チェンバロ協奏曲1曲が演奏されましたが
期待をはるかに上回るスンバラシイ演奏で、たいへん失礼ながらびっくりしました。
何気なく入った小さな洋食屋の料理が超絶的に美味だった!
みたいな、トクした気分になりました。
出演者はほとんどが地元の人。
四国の地方都市でもこんなことができるんだなあ・・・。
私もがんばらなくては! と思って、
とりあえず帰って腹筋をしました(←意味わからん)


その日に読んだ本が、山本幸久「床屋さんへちょっと」

床屋さんが主人公の小説かと思ったら違いました。
ある床屋の常連客で、製菓会社の二代目社長だったけれど
その会社をつぶしてしまった男が主人公の連作短編集。

主人公は真面目で誠実だけど、先代である父親のようなカリスマ性には欠けます。
新しいことにチャレンジしようとしても古参社員は軒並み反対。
やがて会社は時代に取り残され、傾いてゆく・・・。

決して成功とはいえない人生ですが、それでもきちんと筋を通した主人公の生きかたが、
徐々に時間をさかのぼるかたちで描かれます。
いままでの山本さんの「お仕事小説」とはちょっと毛色が違ってますが、
いやあ素晴らしかったです。

考えてみれば少々重い話なんですが、語り口が軽妙なもので、するする読めてしまいます。
コンサートの開演前と休憩時間と行き帰りの電車の中でほとんど読んじゃいました。

 「このさきなにが起こるかはわからない。その不安に打ち勝つためにはいまをがんばるしかない」(150ページ)

主人公の言葉をしっかりと受け継いだ彼の娘の姿に、
ラストは胸が熱くなり、しんみりしました。

よし、うちの娘にもいつかこの言葉、言ってやろう(←ウザがられること確定)

本屋大賞候補に選ばれていても不思議はなかった一冊。
だって「○○○○」より、「××××」より、ずっとずっと面白・・・(以下自己規制)。

(10.3.15.)


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