Amazon.co.jp : 時の娘 ロマンティック時間SF傑作選 (創元SF文庫)
誰でも、「時間よ止まれ!」とか「時よ戻れ!」と思うことって、ありますよね。
私は朝、遅刻しそうなときによく思います。
あとは、飲みすぎた翌日ですね。
「ゆうべに戻って、あの最後の一杯を飲まなかったことに・・・うぷっ!」
もちろん、時間は戻りません。
つらく悲しいことです(←自業自得やんか!)
さて、「時の娘」というから、ジョセフィン・テイの名作推理小説かと思ったら、
「ロマンティック時間SF傑作選」でありました。
すべて海外作品です。
広く知られた作品は避け、「隠れた傑作」を集めています。
読んだことのある短編はひとつもありませんでした。
気に入った作品をいくつかご紹介。
ウィリアム・M・リー「チャリティのことづて」
1700年の少女と、1960年代の少年の心がつながってしまうという
「時代を超えた愛」の王道パターン。
パターンどおりですが、やっぱりいいですねー。
岡崎次郎の漫画「アフター0」に、よく似た設定の作品があります
(第6巻所収の「800年のメッセージ」)。
デーモン・ナイト「むかしをいまに」
「逆転する時間」というワンアイディアを押し通した技巧的な一編。
こういうの好きだなあ。
ジャック・フィニィ「台詞指導」
まごうことなき「フィニィ印」です
昔のニューヨークが大好きなフィニィ。
作者名を伏せられても、これならわかる自信あります。
安心して読めるノスタルジックな佳編。
必死で体を鍛えて10年前にタイム・トラベルした男が突然登場する
バート・K・ファイラー「時のいたみ」
肉体はタイム・トラベルできても記憶や精神はできないという設定。
自分はいったいなんの目的で過去に戻ったのか・・・?
ほろ苦いラストが印象的。
ロバート・F・ヤング「時が新しかったころ」
「たんぽぽ娘」が有名なヤングですが、この作品は恐竜時代を舞台にしたアクションもの。
「こういう作品も書くんだな〜」と思ったら、オチは「たんぽぽ娘」と同じでした!
名作「たんぽぽ娘」とあわせてお読みください。
(「たんぽぽ娘」は、河出書房「奇想コレクション」より近刊の予定です)
つまらない作品がひとつもない、中身の詰まった名アンソロジー。
秋の夜長の読書にふさわしい一冊と言えましょう。
万が一タイム・スリップしてしまったときの心の準備にも好適です。
(09.10.25)