岡崎二郎/アフター0(著者再編集版)
(小学館 全8巻の予定)




Amazon.co.jp : アフター0―著者再編集版 (1)


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マンガで〜す。
岡崎二郎「アフター0」は、1989年から1996年にかけて
主に「ビッグコミックオリジナル」に連載された、SF・ファンタジー&ミステリ系の短編集です。
小説で言えば、R.ブラッドベリや、F.ブラウン、初期の小松左京などを思い出させます。
(SFに詳しい人には、「草上仁をマンガにした感じ」といえば、よく通じます。)
各短編は基本的に独立していますが、シリーズ・キャラクターが出てくるものもいくつかあります。
「SFは苦手」とおっしゃるかたでも、絵柄は可愛いし、ハートウォーミングな作品が多いので、
けっこう楽しく読めてしまうはず。

もともと6冊のコミックスにまとめられていたのですが、やがて絶版となり、幻の傑作といわれていた作品です。
このたびめでたく、著者再編集版として、単行本未収録作品を加えて、全8巻で再刊されることになりました。
現在、第4巻まで出ています(第5&6巻は9月末、第7&8巻は10月末発売)。
既刊の中でとくに好きな作品をいくつかご紹介。

「ほうき星翔ける街角」(第1巻収録)。
空中を浮遊する光るクラゲのような生物があちこちで目撃され始めます。
「ゲルフラウ」と名づけられたそれは、またたくまに増殖、世界中を満たします。
人間に危害を加えるわけではないのですが、車を走らせればフロントガラスに貼りついてくるので、
社会はすっかりパニック&麻痺状態に陥ってしまいます。
K大付属生物研究所の面々はひょんなことからこのゲルフラウを退治する妙案を思いつくのですが・・・

「いつか聞いた鐘の音」(第1巻)
第二次大戦中のこと、東北のある村の寺の鐘は、不思議なことに一人の少女と心を通わせることができました。
しかしある日、軍部から鐘を供出するようにとの命令が下されます。
村人たちは何とか鐘を救おうとしますが、力およばず・・・ 
しかし戦争が終わって20年後、鐘と少女はすばらしい再会を果たします。

「三月の殺人」(第2巻)
伝統を重んじる名家で殺人事件が発生。
被害者は名家専属の楽人のひとり。
外部の力を借りずに事件を解決しなければならないと考えた当主は、
若き女性秘書、カエデに事件の捜査を命じます。
・・・ずいぶん浮世離れした話だと思いながら読んでいると、最後の1ページで見事に背負い投げを食らわされます。
(旧家で楽人が殺されるこの作品、小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」を踏まえているのかも)

第5巻以降が非常に楽しみです。

(02.9.23.記)


追記 : 最終的に全10巻になりました。

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