スタンリイ・エリン/特別料理(1958)(早川書房)
スタンリイ・エリン/九時から五時までの男(1964)(ハヤカワ文庫)

特別料理 九時から五時までの男


ガラッ八:親分こんちわ、読書の秋でやんすね。

親分:おやおや、おまえでも本を読んだりするのかい。

:馬鹿にしちゃあいけやせん、空気は読まぬがは読む、粋でいなせな本の虫たぁ、あっしのことで。

:すこしは空気も読んだほうがいいと思うがなぁ・・・。

:というわけで親分、なんか面白い本ないですかい?

:そうだな、スタンリイ・エリン(1916〜1986)なんかどうだい?

:エリン? 聞いたことないでやんスねえ・・・。

:ここの管理人、ずいぶん前にエリンの第3短編集「最後の一壜」を読んで、感動してたがな。

:短編作家なんで?

:うむ、エリンの本領は切れ味鋭い短編にあると言われている。
 「特別料理」「九時から五時までの男」「最後の一壜」の3冊の短編集で、
 エリンが残した短編41編のうち35編を読むことができるぞ。
 長編でもいくつか傑作を残してるらしいが、残念ながら読んだことがないんだ。

:全部で41編しかないんですかい?

:数は多くないが、どれも高水準、駄作がないんだ。
 すでに古典となっている恐るべきデビュー作「特別料理」が収められた第1短編集には、
 「クリスマス・イヴの凶事」「決断の時」など、一度読んだら忘れられない傑作が収められている。
 第2短編集「九時から五時までの男」は、さらに進化した熟練の名品ぞろいで、こちらをエリンのベストにあげる人も多い。
 文庫でお求めやすい点もメリットだな。
 せっかくだから、3冊まとめて貸してやるよ、ほら。

:ありがとうございますー! サンキュー、センキュー、センノリキューでやんすー!

:・・・わけわからんわっ!

:で、親分お気に入りの一編はどれですかい?

:それは難しいな〜。
 あえて挙げれば、純粋な少年の一生を狂わせてしまった夏の一日を、
 親友の目を通して描いた「運命の日」(「九時から五時までの男」収録)かな。
 モーパッサンの最良の短編にも劣らない深みと哀しみに圧倒される。

:はあー、その「もう沢山」って、エライ人なんですかい?

:ああああ、こんな馬鹿としゃべるのはもう沢山だあっ!!

(07.11.3.)


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