スタンリイ・エリン/最後の一壜
(ハヤカワ・ミステリ 2005年)


Amazon.co.jp : 最後の一壜.

<最後の一壜>
 ワイン鑑定家のドラモンドは、史上最高の名品にして幻のワインと言われるニュイ・サントアンの1929年ものを、
 一壜だけ所有していました。
 ある富豪からそれを10万フランという破格の高値で売って欲しいと言われた彼は、
 富豪の人柄とワインを愛する心に魅了され、取引に応じますが・・・。
                                             ほか、全15編


久しぶりに、「読み終えるのが惜しい!」と思った一冊です。

ロアルド・ダールと並んで、「奇妙な味」と評されるアメリカの作家、スタンリイ・エリン(1916〜1986)の第3短編集。
執筆年代は1963年から1978年。 ほぼ一年に一作のペースでじっくり仕上げた名品ぞろい。
タイトルを意識して言うならば、熟成されたワインのような味わいです。
表題作の「最後の一壜」は有名な作品らしく、これだけは何かのアンソロジーで読んだ事がありました。 

後期になるほど一編が短くなり、隙も無駄もない、緊密な短編が並びます。
どれほど厳しく推敲を繰り返したことでしょう。
私も、HPにアップする文章は、それなりに推敲しているつもりではありますが(聞こえる・・・「それでその程度かい!」という声が)、
まだまだまだまだ甘かったっ!
一編につき一年間推敲を重ねれば、私もスタンリイ・エリンになれる・・・・わけはないって。

中でも面白かったのは、ブラックでアット・ホームな「127番地の雪どけ」
切れ味抜群のナイフのような「贋金づくり」、見事なオチにスカッとする「画商の女」、といったところですが、
特に印象に残ったのは、オバカな現代娘と、悲しい老人の対比が鮮やかな「世代の断絶」です。
(05.3.28.記)


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