貴志祐介/新世界より
(講談社 2008年)

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<ストーリー>
舞台は1000年後の日本、利根川流域。
渡辺早季は、神栖66町に住む少女。
人々の暮らしは、一見まるで昭和初期のよう。
自動車はなく、電気はあるけれど公民館の拡声器の放送にしか使いません。
町の周りには八丁標(はっちょうじめ)と呼ばれる注連縄が張り巡らされ、
外から流れてきた悪いものが町に侵入しないよう、道切りをしてあります。
12歳を少し過ぎて、皆と同じように祝霊が訪れ、
呪力に目覚めた早季は、無事全人学級に進級します。

今年最高のエンタメ小説登場ですっ!

まだ5月ですが、そう言い切りたくなるほどの、圧倒的なおもしろさ。

平穏な神栖66町で、主人公が成長していく様子が、
まずは淡々と語られます。
一見平和な町、平等な社会、人々は助け合って生きています。
でもどこか不自然です。
カズオ・イシグロ「私を離さないで」にも似た不気味さ。

この時代、大人は誰もが「呪力」と呼ばれる念動力を持ちます。
使い方を誤ると大変危険なので、
子供たちは呪力に目覚めると、全人学級に進み、
それを適切にコントロールするすべを学びます。

町の外には遺伝子操作で知能を持たせた巨大ネズミ、バケネズミが住んでいます。
人間は彼らを呪力で支配し、雑役や単純労働をやらせているのです。

ひょんなことからバケネズミたちとかかわりを持つことになった
早季と友人のは、
人間とバケネズミ双方を巻き込む、大きなうねりの中に投げ込まれます。

もう後半はノンストップ。
突然起こる大友克洋「童夢」「AKIRAみたいな壮絶な超能力合戦。
さらには廃墟と化した東京の地下を舞台に繰り広げられる逃避行、そしてまた戦い。
物語が始まったときには想像もしなかったスペクタクル・アクションのつるべ打ち。

ただし、異形の生き物たちのグロテスクな描写とか
殺戮場面のえげつなさなどは、好みが分かれるところでしょう
(いえ、私も決して殺戮が好きなわけでは・・・)

どうしてこのような社会が作られたのか、
その経緯も次第に明らかになり、
最後には人間とバケネズミの関係など、色々な謎が明かされます。

しかし、すべてを説明し尽くしていないところが、かえっていいですね。
早季のの件とか、真理亜に結局なにがあったのかとか、読み終えてからいろいろ想像するとまた怖かったり面白かったり。

物語のテーマとしては、
あまりにも強力すぎる武器を手にしたとき、それをどう扱えばよいのか
あるいは
人間は自分以外の種に対してどれほど残酷になれるのか
ということなのでしょうが、
とにかくエンタテインメントとして驚異のハイレベルに達していますので、
何も考えずにひたすらページをめくってしまったのでありました。

いやあー、面白かった。 お腹いっぱい、堪能いたしました。

(08.5.13.)

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