ノア・ゴードン/シャーマンの教え(千年医師物語・第2部)
(角川文庫・上下本・2001年)




Amazon.co.jp : シャーマンの教え〈上〉―千年医師物語2 (角川文庫)

Amazon.co.jp : シャーマンの教え〈下〉―千年医師物語2 (角川文庫)

ストーリー>
南北戦争さなかのアメリカ。
父の死の知らせを受けたかけだしの医師、ロバート・ジェファソン・コールは、
生まれ故郷であるイリノイの小さな町に帰ってきた。
父、ロバート・ジャドソン・コールの遺品を整理していて見つけた分厚い日記帳。
そこには、政治的活動のため故郷スコットランドを追われた父が、
新天地アメリカで若い医師として奮闘するみずからの姿を、克明に書き記していた。
インディアンの呪術医とのふれあいや、戦時にあっても医師の使命をまっとうする父の姿に
息子は自分の人生を重ね合わせてゆく。


「千年医師物語・第2部」は、第1部から800年の時を越えて、19世紀のアメリカが舞台です。
この家系は、息子に「ロバート・J」という名前をつけることになっているので、父も子も「ロブ・J 」と呼ばれます。
ちょっとわかりづらいので、息子のほうには「シャーマン」というあだ名がついています。

父ロブは追われるようにアメリカに渡ってきたのですが、イリノイが気に入り、
16家族しか住んでいない小さな集落で医者を開業します。
そこに年々人が移り住んできて町が大きくなってゆく様子は
まさしく「西部開拓史」という感じです。

父ロブはインディアンの呪術医の女性とも親しくなり、彼女から多くのことを学びます。
ところが彼女はある日何者かに殺害されてしまうのですが、その犯人探しもこの物語の主要な一部分です。

さて息子シャーマンのほうは、幼いときに熱病にかかり、聴力を失ってしまいます。
しかし彼は、懸命に努力して念願の医学校へ。
そのころから、世の中はしだいに南北戦争へと傾いてゆき、
ロブ・J 父子と彼らの周りの人々もいやおうなく巻き込まれます。
この南北戦争に関する記述が非常に詳しく、また面白く読ませます。
戦闘場面の描き方も、客観的で淡々としているのですが、すっかり引き込まれてしまいます。
おもに最前線の兵士達の立場から書かれていて、この戦争の愚かさや悲惨さが
私のような門外漢にもひしひしと伝わってきました。
南北戦争前後のアメリカの歴史にもずいぶん詳しくなりました。

今回も前作に続いてユダヤ教など宗教の問題もからんでくるし、
奴隷制、インディアン問題など当時のさまざまな社会問題が盛り込まれています。
起伏の激しいストーリーにもかかわらず登場人物も良く書き分けられていて、
大変読みやすい小説です。

ただ難を言えば、強さとやさしさと信念をもち、人生を切り開いてゆくこの主人公の父子が
あまりにも理想化されていることでしょうか。
これじゃ、ほとんどスーパーヒーローです。
しかしとても面白い作品でした。第3部も楽しみです。

(02.2.7.記)


「本の感想小屋」へ

「整理戸棚」へ

「更新履歴」へ

HOMEへ