劉慈欣/三体(2006〜10)
(第1部・三体、第2部・黒暗森林、第3部・死神永生)
(早川書房 翻訳:大森望、光吉さくら、ワン・チャイ)



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物理学者の父を文化大革命で殺された中国人エリート科学者・葉文潔(イエ・ウェンジエ)。
人類に絶望した彼女は、地球文明の情報を電波として宇宙に発信する。
数年後、地球から4.3光年離れた、三つの恒星を持つ星系に生きる「三体星人」が情報を受け取る。
「三体問題」のせいで太陽の動きが予測できず過酷極まりない環境に暮らす「三体星人」は、地球を征服することを決断。
地球よりは進んだ科学技術を持つものの、彼らの宇宙船では地球まで450年必要と計算した三体星人は
450年後の地球の科学技術が三体と同レベルに発展することを妨げるため、秘密兵器「智子(ソフォン)」を地球に送り込む。


親分:「三体」完全読破したたい!

ガラッ八:なんすかその「三体」ってのは。

親分:劉慈欣(リウ・ツーシン)著の中国の大長編SF小説だ、もう面白いのなんの。
 文化大革命のシーンから始まり、第1部では数十年、第2部では百年以上の時が流れる。

ガラッ八:中国四千年の歴史って感じですね。

親分:そして第3部ではそれどころじゃなく・・・おっとあんまり言うとネタバレになっちまう。

ガラッ八:まさか何千年もたっちゃうとか?

親分:さあ、どうかな〜。
 三体星人が地球に攻めてくることがわかると、防衛力強化や先制攻撃を唱える多数派に対し、
 いっそ進んだ宇宙人に征服してもらおうと考える「地球三体協会」ができたりして、人類も一枚岩ではなくなるのが面白い。

ガラッ八:えー、でも皆殺しにされちゃったらどうするんですか。

親分:第1部ではそういった人類同士の争いも克明に描かれる。
 戦闘シーンがスペクタクルでスケールでっかいうえ、双方知略をめぐらせて「三国志」の「赤壁の闘い」を連想する。
 超剛性のナノファイバーをパナマ運河に箏の弦のように張り、敵対勢力の船をスライスしてしまう「古筝作戦」なんて、考えるだに恐ろしいがヴィジュアル的なインパクトは抜群だ。

ガラッ八:船をスライスって・・・よくそんなこと思いつきますね。

親分:第2部「黒暗森林」(なぜか「暗黒」ではない)では三体星人と人類の闘いも激しくなってくる。
 とくに三体側が送り込んできた兵器「水滴」の攻撃は背筋も凍る凄さ恐ろしさ。
 これはもう「読んで驚け」としか言えないな。
 なお最後まで人類と三体星人が直接対面することはないので、三体星人の外見やサイズは描かれず不明のまま。

ガラッ八:「古筝作戦」「水滴」ってネーミングが東洋ですねえ。

親分:第2部の最後で人類防衛の責任者である面壁者・羅輯(ルオ・ジー)は「黒暗森林」という考えにたどり着き、三体星人をいったん退けることに成功する。

ガラッ八:なんすかその面壁者とか黒暗森林ってのは?

親分:「黒暗森林」は要するに「自分以外はすべて滅ぼすべき敵」という考え方で、他でもない中国からこういうのが出てくるのはちょっと怖いな。
 日本人にはちょっと思いつかない思想かも知れん。

ガラッ八:うーん、なんかよくわかりませんが、不吉なネーミングではありますねえ。

親分:第3部「死神永生」(ししんえいせい)はさらにスケールが大きくなり、侵略SFの枠を超えて宇宙いや時空全体を包含する大スペクタクルが展開する。

ガラッ八:ちょっと何言ってるのかわかりませんが・・・結局人類と三体はどっちが勝つんですか。

親分:だからもうそういう次元の話ではなくなってくるんだよなあ。
 次々出てくる奇想天外な着想に頭が沸騰しそうになる。
 三体星人に人間の脳だけを送るだの、光速の低速化だの、物理法則を武器にするだの、三次元を二次元に落とし込む次元攻撃だの・・・。

ガラッ八:だから何言ってるのかわからないんですけど。

親分:まあ読まんとわからんよ、俺なんか読んでもよくわからんくらいだったぞ!

ガラッ八:なにを威張ってるんですか。

親分:とにかく凄いSFだよ、個人的にはダン・シモンズ「ハイペリオン」以来の衝撃だった。
 大風呂敷を広げて最後には風呂敷ごと時空の彼方に飛んで行ってしまう。
 繰り返しになるけど・・・「読んで驚け」としか言えない。

(2021.08.08.)

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