佐久協/高校生が感動した「論語」
(祥伝社新書 2006年)
Amazon.co.jp : 高校生が感動した「論語」
論語がこんなにすらすら読めていいかしら?!
裏表紙の著者近影が素晴らしいのです。
慶応義塾高校で、三十年にわたって「論語」を講じていたというだけあって、
自身がすでにして中国の賢者のような、味わい深い老師仙人系の風貌。
その先生の手になる、孔子「論語」の「超訳本」。
高校生でもすらすら読めるように書かれています。
確かに読みやすいわこれは。
そもそも「論語」ってどういう内容かよく知らなんだのですが、
要するに処世術・人物評、政治・教育に関する短文をまとめたものなのですね。
飲み屋でオッサンがしゃべっていることと、その本質は変わりないではないかと、不遜にも思ったり。
いや私もオッサンですが。
「ともかく人生は、愚直なくらいまっすぐ生きるのが一番だよ。」
(子曰く 人の生くるは直し)(24ページ)
「昔の学び手は自分の修養のために学問をしたものだが、今のは知識をひけらかすためにするようになっちまったね。」
(子曰く 古えの学者は己の為めにし、今の学者は人の為めにす)(47ページ)
「世間に知られていないことをグチらずに、己の才能のないのを気にかけて精進することだよ。」
(子曰く 人の己を知らざることを患えず 己の能なきを患う)(104ページ)
・・・同じようなことを、最近飲み屋で新入社員に向かって説教したオジサン、おられませんか?
それにしても孔子さん、2500年前に生きた人であります。
「老子」を読んだときも思ったのですが、国や時代が変っても、人間の本質は変らないのですね。
「規則や法律を整備して違反したらビシビシ罰する。
そんなことをしていたら誰もが法に触れなければ何をしたっていいんだなと荒んだ気持ちになるのがオチさ。」
(子曰く これを導くに政を以ってし、これを斉うるに刑を以ってすれば、民免れて恥ずること無し)(240ページ)
これにはちょっとドキッとしました。
いやべつに私が法に触れることをしているわけではなくて・・・。 してません、してないってば!!
とにかく読みやすいです。
全512章のうち、収録されているのは377章。
原文(漢文)も同時収録されているし、これで一応「『論語』を読んだ」と言ってしまって良いのだろーか(半信半疑)?
唯一この本の欠点と思われるのは、あまりにもざっくばらんでわかりやすいので、
「論語って、案外軽い読み物じゃん」
と思ってしまう軽薄者が多数輩出されるだろうことです・・・って自分がそうなのですが。 すみません。
(07.4.5.)