マリア・V・スナイダー/毒見師イレーナ
(渡辺由佳里・訳 ハーパーBOOKS 2015)
Maria V Snyder/Poison Study (2005)



Amazon.co.jp : 毒見師イレーナ (ハーパーBOOKS)


殺人罪で死刑を宣告された少女イレーナは、執行の日、思わぬ選択肢を与えられる。
絞首刑か、それと も国の最高司令官の毒見役になるか。
毒見役を選んだイレーナに与えられたのは、逃走防止の毒薬。
毎日与えられる解毒剤なしには生きられぬ身体となったイレーナは、わずかな希望にすがり壮絶な日々に立ち向かう。
敵か味方かわからぬ人たち、背後に蠢く陰謀。
そして、なぜイレーナは殺人を犯したのか?


先日、東京から帰る新幹線の中で読んでいて・・・・・・思わず乗り過ごしそうになった一冊。
いやー、あぶなかった。

 マリア・V・スナイダー/毒見師イレーナ

冒頭からリーダビリティたっぷりで、とくに後半はページをめくる手が止まりません。
パターン通りといえばパターン通りなんですが。
孤児であるヒロインが、知恵と度胸だけを武器にのし上がり、ついには国を動かすまでになるという、アメリカ人が大好きなファンタジー・ストーリーです。

エリザベス・ヘイドン「ラプソディ 血脈の子」 とか、ブランドン・サンダースン「ミストボーン 霧の落とし子」 とか、
ジャクリーン・ケアリー「クシエルの矢」とか、類似先行作品は枚挙にいとまがありません。
自分自身でも単なる孤児だと思っていたヒロインがじつは・・・・・・という貴種流離譚パターンであるのも「やっぱりな」。
ほとんど様式美と言っても良いほどです。

しかしパターンに則りつつ、読者をとらえて離さないのは至難の業。
巧みなディテール、次々に湧いてくる謎、命がけの毒見のスリル、そして恋愛要素と、
手を替え品を替え繰り出される連続技に翻弄され、気づいたら読み終えてました。
とても読み応えのあるエンタテインメントでした、楽しゅうございました。

なお、上にあげた類似作がすべてそうであるように、これもまた3部作の第1作(様式美)。
続巻に期待! 早く出して! なのであります。

(2015.08.05.)

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