東野圭吾/ナミヤ雑貨店の奇蹟
(角川書店 2012年)




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犯罪を犯して逃走中、盗んだ車が故障して、
とある廃屋に潜むことになった3人の若者。
そこはずっと昔に閉店した雑貨店。
ところがなぜか、店の郵便口から手紙が届く。
なんとそれは、過去からの悩み相談。
3人はやがて、それらの相談に真剣に対峙しはじめ・・・。



iPS細胞を作り出した山中伸弥教授ノーベル賞受賞で持ちきりの今日このごろです。

私は2年ほど前に山中教授の講演を聴く機会がありましたが

 とにかく話が上手い!

発音明瞭で聞き取りやすく、iPS細胞の説明はわかりやすく、
さらに随所でしっかり笑いもとります。

 ものすごく頭のいい人根っからの関西人や! と思いました。

私もたまに人前で話をする機会があるのですが、
山中教授の巧みな話術をすこしでも見習いたいものだ! と思いました。

 むずかしいことをやさしく
 やさしいことをふかく
 ふかいことをおもしろく
 おもしろいことをまじめに
 
              (井上ひさし)

・・・まあ、全然できませんけどね。
とくにギャグがすべるのがいちばん悲しい(ダメだこりゃ)。


さて、東野圭吾の新作「ナミヤ雑貨店の奇蹟」
エンタテインメント小説の王道をいく大傑作です。

 読みやすくて、面白くて、内容もたっぷり。

一種のファンタジーであり、時を超えたおとぎ話ですが、現実にもしっかり足を据えています。
そして読んだあと、前向きな気分になれるのが嬉しい。
最近は、読んで辛くなったり割り切れない気分になる小説が少なくないですから。

巧みに張り巡らされた伏線の数々。
最後にすべてがパズルのようにおさまる快感。
希望と力をあたえてくれるエンディング。
もう言うことありません。

根が素直な性格である私は、

 「ええ話やったなあ〜」

と、しみじみ感動するとともに、綿密に組み上げられたプロットの妙に魅了されたのでありました。

「ガリレオ」「新参者」を書きつつ、こんな小説も書くとは、東野圭吾さん、引きだし多いですねえ。
しいて言えば、久々の「時生(トキオ)」系列。
「流星の絆」 も連想しました。

これほど複雑な話を構想し、それを読者にすんなり理解させてしまう手腕。
東野圭吾さんは、山中伸弥教授に負けず劣らずの超優秀頭脳の持ち主に違いありません。

(2012.10.23.)


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