武満徹/波の盆 ほか
(尾高忠明・指揮 札幌交響楽団)
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今年(2020年)のお盆はCOVID-19のパンデミックのせいで何かと不自由。
私は隣県にある両親の墓参りだけ済ませました。
最高気温38度の殺人的猛暑の中、車で霊園に行き墓を洗って花と線香を供えて、車で帰ってきました。
実家を訪問したり親戚に会ったりはしませんでした。
ある意味気軽でよかったかも・・・。
家に帰って、武満徹/波の盆 を聴いています。
「テレビドラマの音楽で、お盆に関係あり」という漠然とした知識しかなかったのでネットで調べると・・・。
「波の盆」は1983年にNHKで放送されたドラマで、脚本は倉本聰、監督は実相寺昭雄、出演者は笠智衆、加藤治子、中井貴一、石田えりなど錚々たるメンバー。
ハワイ日系移民の祖国への思いや戦死者への鎮魂を描いた作品であり、
移民1世の老人・山波公作(笠智衆)が、妻ミサ(加藤治子)を亡くした1983年の新盆の日、その1日の物語とのことです。
私が持っているのはサントラではなく尾高忠明指揮、札幌交響楽団による2000年録音のCD。
サントラ(廃盤)には全部で15曲収録されているようですが、このCDでは6曲が演奏されています(18分少々)。
静かな祈りのような繊細で澄んだ響きとたおやかなメロディは、亡き人の思い出を静かに辿るのにふさわしいです。
武満徹といえば難解な現代音楽のイメージ。
私も若いころは「ノヴェンバー・ステップス」や「カトレーン」を眉根にシワ寄せながら聴いて、
「東洋と西洋の響きを融合した傑作」とか「幽玄で神秘的な響きの諸相を味わうべきだ」とかブツブツつぶやいてたもんですが(ヤバい奴)、
正直「こんなんわけわからんわ〜」と思っておりました。
そこへいくと「波の盆」は難解なところはなく、ひたすら美しいです。
このCDには、黒澤明の映画「乱」の音楽も収められています。
これも武満徹だったんですね。
武満徹はドラマや映画のサントラでは綺麗で親しみやすい曲をたくさん書いています。
なかでも1979年の映画「燃える秋」の主題歌は、ハイ・ファイ・セットが歌ってかなりヒットしました(作詞は五木寛之)。
第2回日本アカデミー賞で最優秀音楽賞を受賞し、武満夫人によると、この曲の印税収入が武満作品の中で最も多かったそう。
しかし作曲者としては、いろいろ忸怩たる思いがあったようです。
本来の自分の作風とは異なる、ビジネスとして注文に応じて仕上げた「商品」がヒットして日本アカデミー賞を受賞・・・
これを「武満の代表作」のように言われてはたまったものではない、ということでしょうか。
いい曲だと思いますけどね。
「波の盆」全曲(サントラ)
(2020.08.15.)
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