武満徹/ギター作品集
(福田進一 2012録音)



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2月20日は武満徹の命日(1930年10月8日 -1996年2月20日)。
今年(2021年)で没後25年・・・もうそんなになるのですね。

私は決して武満徹の良い聴き手ではありません。
若かりしころ、「ノヴェンバー・ステップス」「カトレーン」が「レコード芸術」で絶賛されているのを読んで、
ろくに知りもせずLPを買い、腕組みをして「ふむふむ」とうなずきながら一通り聴き、

 「ようわからん・・・」  「買うんじゃなかった・・・」

としまい込んだ哀しい思い出があるくらいです。

 ノヴェンバー・ステップス(1967) (途中まで)
 

 カトレーン(1975)
 

いま聴いてみるとなかなか良い曲ですね・・・。
つい聴き入ってしまいました。
子供のころ大嫌いだった高野豆腐が大人になったら好物に変わった記憶がよみがえります。


それはそれとして、そんな私にも抵抗なく聴けた武満徹が「ギター曲」。
不思議なもので、現代音楽もギターで弾かれるとすんなりと耳になじむのです。
アコースティック・ギターの柔らかくて暖かい音だとなんとなく受け入れられるんですかね。

武満徹の最初のギター作品は「フォリオス」(1974)。
ギタリスト庄村清志のために書かれた、3つの曲からなる9分足らずの作品。

 1974年のリサイタルの為に、武満徹さんにギター曲をお願いした。
 当時、武満さんは「ノヴェンバー・ステップス」によって、世界で脚光を浴び、雲の上の存在だった。
 そこに無名の一ギタリストがたずねて行って、今思ってもよく曲を書いて下さったものだ。
(庄村清志のホームページより)

 フォリオス・第3曲(後半にバッハ「マタイ受難曲」のコラールが引用されます)
 

庄村清志には1993年に「エキノクス」という曲も書いています。

 1994年に25周年のリサイタルを行なう。 この一年前に武満さんに曲をお願いしたら、とても忙しくて無理と断られる。
 10分後に武満さんから電話が入り、「書けるかもしれないが、間に合わない時の為、チラシに書かないでほしい」とのこと。
 3ヶ月後に「エキノクス」というタイトルの曲が送られてくる。
 中に「この曲は、荘村からギターについて色々知ることが出来たそのお礼に25周年の贈り物として書いた」とあり、 感激のあまり言葉を失った。
 考えてみると、武満さんには本当に真心をいただいた。感謝のみである。
 (庄村清志のホームページより)

ええハナシやな〜。
大作曲家と名演奏家の互いにリスペクトしあうリレーションシップが麗しいです。

 エキノクス
 

「すべては薄明のなかで」(All in Twilight)(1987)は、パウル・クレーの絵画にインスパイアされた作品。
静寂の中から和音が立ち現れ、薄明かりの中に去ってゆくような印象を受けます。
もしドビュッシーがこれを聴いたら自分もギター曲を書こうとしたんじゃないかな。

 すべては薄明のなかで・第4曲
 

「森の中で」(1995)は武満徹の最後の作品。
晩年の作品らしく、余分な響きがそぎ落とされた、シンプルでありながら豊かな音楽。

 森の中で・第3曲「ミュアー・ウッズ」
 

このCDは武満徹のギター独奏曲を年代順に収録しています。
さらに親交のあったギタリスト/作曲家 レオ・ブローウェルが武満徹の思い出に捧げた曲を2曲収録し、
最後に武満徹がビートルズ「ヒア・ゼア・アンド・エブリホエア」「イエスタディ」をギターに編曲したものがおさめられています。
どちらも名編曲として名高く、ギタリストの重要なレパートリーになっています。

 Here, There and Everywhere
 

 Yesterday
 

演奏は日本を代表するギタリスト 福田進一
ギターのことはよくわかりませんがとにかく綺麗です。
聴いていると心が静まってゆくような、なごめる一枚でした。

(2021.02.21.)


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