アレクサンドル・デュマ/三銃士(1844)
(角川文庫 1961年)

三銃士 (上巻) 三銃士 (下巻)

<ストーリー>
時は1620年ごろ、青年剣士ダルタニャンは、
武人として一旗挙げるためパリにやってきた。
ところが都会のしきたりに慣れないダルタニャン、
アトス、ポルトス、アラミスの三人の銃士を
うっかり侮辱してしまい、決闘する羽目に。
その決闘の場を通りかかったリシュリュー枢機卿の親衛隊に
喧嘩を売られたダルタニャンと三銃士、
一致団結してこれを撃退する。
いさかいはどこへやら、ダルタニャンと三銃士は
強い友情で結ばれることになり・・・。


「モンテ・クリスト伯」と並ぶデュマの代表作「三銃士」

いやあびっくりした、知らなんだ。
何をって、主人公ダルタニャンは三銃士の一員じゃないんですね。
三銃士はアトス、ポルトス、アラミスの三人で、
主人公ダルタニャンの友達なのでした(←無知)

さて序盤から、あざといまでのご都合主義な展開が炸裂(←褒めてます)
喧嘩と決闘はパリの華、
二言めには侮辱したのされたのと大騒ぎのダルタニャン。
三銃士の面々と偶然一人ずつ出会ってはいちいち決闘を約束するいっぽうで、
また別の貴族とも喧嘩しちゃうのですが(もう喧嘩ばっかり)
こちらは偶然にも三銃士の宿敵リシュリュー枢機卿の腹心。
ダルタニャンもいやおうなく彼らの争いに巻き込まれていくのです
(というか喜んで飛び込んでいくのです)

まるで女子高生が通学途中に男子生徒とぶつかって
「いってぇ・・ちゃんと前見て歩けよ」とかいわれて
なんとか学校にたどり着いたら先生が
「今日はみんなに新しい友達を紹介する」
「ああ〜さっきのアイツ、転校生だったの?!」
・・・みたいなゴツゴーな展開ですっ!(←そうかぁ?)
でも面白い。

しかし、フランス人同士、国王派と枢機卿派で殺しあったり、
カトリックとプロテスタントで殺しあったり、
ストーリーには血なまぐさ成分がかなり含有されています。
新撰組を連想しましたよ。
「もっと命を大切にしましょう!」と突っ込みたくなるのであります。

さて物語を一段と面白くしているのが、
美貌の悪役ミラディーの存在。
強烈です。
黒蜥蜴より妖艶で、玉梓が怨霊より執念深く、ドロンジョさまよりタカビーな、
史上最強の女悪役!
最高に魅力的。
私などが近づいていったら瞬時に毒殺されそうです。

ストーリー展開は史実に基づいていて、
ラ・ロッシュ攻防戦バッキンガム公暗殺などは歴史どおり。
17世紀フランスの歴史を知っていればさらに面白いのでしょうが、
知らなくても全然大丈夫でした。
ちなみにダルタニャンも実在の人物だそうです(かなり改変されてますが)

「三銃士」「二十年後」「ブラジュロンヌ子爵」の三部からなる大長編「ダルタニャン物語」
残念ながら第二部「二十年後」の翻訳は現在入手困難。
第三部「ブラジュロンヌ子爵」は、後半のみ仮面の男として角川文庫で読めます。

(08.5.5.)

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