トーマス・コッペル/リコーダーのための作品集
ミカラ・ペトリ(リコーダー) クレメラータ・バルティカ ほか



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<曲目>
リコーダーと管弦楽のための協奏曲
「ムーンチャイルズ・ドリーム」
リコーダーとリュートのための組曲
「ネレの踊り」
リコーダーと弦楽とチェレスタのための
「ロスアンジェルス・ストリート・コンチェルト


また、こんなマイナーなCDを取り上げてしまった・・・。

デンマークの作曲家トーマス・コッペル(1944〜2006)が、モダン・リコーダー奏者ミカラ・ペトリのために書いた作品を集めた一枚。
「ミカラ」といえば、つい「出た錆」と答えてしまう私のようなオヤジもわけへだてなく、夢幻の世界にいざなってくれます。

聴きものはやはり、リコーダー協奏曲The Moonchild's Dream(1990)。
日本語でいうと、「かぐや姫の夢」かな(←ちょっと違うと思う)。
きらめく星空のようなオーケストラをバックに、月からやってきた妖精が遊びたわむれます。
妖精が飛行したあとにはきらきら光る航跡が(映画「ピーターパン」ティンカーベルのイメージ)。
鳥とおしゃべりに興じたり、雪と舞い踊ったり、ひとしきり遊んで疲れた妖精、ふたたび空のかなたへと消えてゆきます。
(注:私が勝手に想像したこの曲のイメージです)

 「ムーンチャイルズ・ドリーム」
 

モダン・リコーダーの硬質な音は、いかにも純粋無垢な妖精っぽい印象。
ペトリにとっては二度目の録音です。旧録音よりさらに変幻自在な演奏が楽しめます。

リコーダーとリュートのための組曲「Nele’s Dances」(1991)、
優雅でかわいらしい組曲ですが、グレゴリオ聖歌「怒りの日」が引用されたり、
「生ける死者の踊り」なんてグロデスクな曲もあったりして、面白いです。
ティル・オイレンシュピーゲル伝説に題材をとっており、「ネレ」はティルの憧れの女性なんだとか。

 「ネレの踊り」より
 

リコーダーと弦楽とチェレスタのための「Los Angels Street Concerto」(1999)、音で描いたロスアンジェルスの風景。
忙しそうに歩くビジネスマン、買い物するメキシコ人女性たち、行き交う自動車、
ホームレス、子供を連れた母親、ティーンエイジャーたち、路上でパフォーマンスするアーティスト・・・。
全ての奏者に非常に高度なテクニックが要求される難曲、と作曲者は述べています。
とくに標題を意識せず聴いても、気の効いた現代作品として楽しめます。

 第3楽章
 

それにしてもミカラ・ペトリのテクニックは凄いです。
速いパッセージの切れ味、音色の変化、うたごころ、リコーダーってこんなにも表現力豊かな楽器なのですね。
目から、いや耳からウロコがぽろぽろ落ちるのであります。
え、これって耳アカ?(汚いっ!)

(06.10.14.)


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