R・シュトラウス/
メタモルフォーゼン、四つの最後の歌、オーボエ協奏曲

(デヴィッド・ジンマン指揮 チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団)



Amazon.co.jp : R・シュトラウス:メタモルフォーゼン、4つの最後の歌、オーボエ協奏曲



これは価値ある1000円!


みなさまこんにちは。

下の娘に作文の宿題が出てまして、テーマは「私の知ってる素敵な生き方をしている人」だそうです。
私が若い頃は、「私が尊敬する人」というテーマがよくありましたが。
でもって私も「乃木大将」「東郷元帥」のことを書いたり・・・してませんけど(←何歳じゃおまえは)

娘はといえば、なんと不肖この私のことを書くんだそうで・・・。
「お母さんには断られたから」というのが理由ですが、他にもっとましなネタないのかおまえ・・・と、わが娘ながら不憫でたまらん今日この頃です。

しかし「素敵な生き方」ねえ・・・
まあ、勤勉にも晩酌は毎晩欠かさないし、ネットでCDやら本やら衝動買いしては封も切らずに積んでるし、
そのくせカードの明細見ては「ギャッ!」とか言ってるし、こないだ長女の理科の宿題いっしょに解いて思いっきり間違えたし・・・

・・・・おーい、やっぱり止めた方がいいぞぉ。
悪いこと言わんから別のネタ探せ。

さて、「素敵な生き方」といえば思い浮かぶのが、晩年のリヒャルト・シュトラウス(1864〜1949)。
その作風は、良い具合に脂肪が抜け、欲望も超越、無我の境地を自在に戯れます。
高僧のありがたいお話を聞くようです。
だんだん眠くなってくるところも似ているなぁ(コラコラ)

このCDは彼の晩年の傑作を1枚におさめ、演奏も録音も素晴らしくて、なんと1000円!
涙ちょちょぎれる一品です。

23弦楽器のための「メタモルフォーゼン」
この曲なんか、もう最高であります。
弦楽合奏ではなく「23の独奏弦楽器のため」、つまり楽譜は23段。
大規模な室内楽ともいえます。
 (このCDの演奏ではありません)

ベートーヴェン「英雄交響曲」第2楽章(葬送行進曲)の主題をモチーフに、繊細かつ精妙に作り上げられた音の万華鏡
第二次大戦末期の1945年3月、ドレスデン大空襲ウィーン国立歌劇場崩壊の知らせを聞いた81歳のR・シュトラウスは、
失われた祖国の文化や風土を悼んで、わずか1ヶ月でこの曲を書き上げました。
でも私は何も考えず、巧緻で多彩な音の流れ、濃密で優美な響きをただ楽しんでおります。
だってキレーなんだもん。
有無を言わせぬ究極の美しさ、オトナのクラシックであります。

なおR・シュトラウスは、息子の妻がユダヤ人であったことや、ユダヤ系の仕事仲間が多かったことからナチス政権下ではいろいろ苦労しました。
ナチス思想を嫌悪しながらもドイツを代表する作曲家として音楽局総裁に就任し、ナチスと虚々実々の交渉を行い、息子の妻や孫を守り抜きました。
なんとなく、ショスタコーヴィチとソビエト共産党の関係を連想します。


「四つの最後の歌」
は、その名のとおり作曲者最後の歌曲、と同時に完成した最後の作品です。
これ聴いてると、「彼岸」「浄土」「涅槃」「極楽往生」「迷わず成仏」といった言葉が脳裏をよぎってしょーがないんですよ。
作曲中のR・シュトラウス(84歳)には天国の風景でも見えていたのでしょうか。
とろける響きに酔いしれるのみです。
うっかり聴きながら眠ってしまうと、二度と目が覚めないんじゃないかと怖くなるほどの美しさ。
じつはアブナイ音楽かもしれません。
 (第4曲「夕映え」より)

「オーボエ協奏曲」に関しては、少し前にも取り上げさせていただきました→ココ
いやあ、いつ聴いてもよい曲ですねえ。
絵にもかけない美しさ(そりゃ描けんわな)。
このCDの演奏も、じつに優雅で軽やか、決してホリガーに負けてないと思います。
 (抜粋 このCDの演奏ではありません)


とにかくこのCD、(少なくとも私は)何度聴いても飽きません。
一生モノでございます。
それが1000円ですから、コスト・パフォーマンスは非常に素晴らしいです。

死ぬ前に、このような境地に達することが出来たR・シュトラウス、作曲家としては「素敵な生き方をした」人であったのだなあと思います。
私も人間として見習いたいものです。
もっとも私は、子や孫にもてあまされながら120歳くらいまで生きようと思ってますので、まだまだ先の話になりますが。

(08.8.4.)


「音楽の感想小屋」へ

「整理戸棚」へ

「更新履歴」へ

HOMEへ