ポール・ホフマン/神の左手
(講談社 2011年)



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<ストーリー>
不毛の荒野にそびえる超巨大な建物「サンクチュアリ(聖域)」
自らを「救世主」と呼ぶ黒衣の男たちが統治する、監獄のような修道院のような恐怖の迷宮。
ここには少年たちが次々に連れてこられ、厳しい訓練を受ける。
規則を破れば死に至る刑罰、友情は禁止、知識を求めるなどもってのほか。
10年にも及ぶ命がけの訓練を生き残った者は、いずこへか送り出される・・・。
嘘と裏切りと抑圧に満ちたこの場所で、他人に決して心を開かない14歳の少年ケイルは、
いまわしい事件に巻き込まれ、ほかの二人の少年とともに逃亡を余儀なくされる。
逃亡者には残虐極まりない死の刑罰が待っている。
逃げるケイル、迫る追っ手・・・。



「ダーク・ファンタジー」というのでしょうか。
「ハリー・ポッター」がお子様向けなら、このポール・ホフマン「神の左手」は18歳未満禁止レベル。
血と汗と泥の匂いにまみれた悪夢のような世界を舞台に、
裏切り・狂信・戦闘・陰謀が渦を巻きます。

それなのにこの読みやすさはどうしたことでしょう?
いきなり物語世界に叩き込まれ、ページを繰る手が止まりません。
恐るべきエネルギーをもった、スケールの大きな物語に、ただただ翻弄されます。

それにしても最初の舞台となる建造物「サンクチュアリ(聖域)」の物凄さよ。
巨大な迷宮、いたるところにある閉ざされた扉。
「救世主」たちですら、すべてを知り尽くしたものはいないと言われ、
だれがいつ、何の目的でこの建物を作ったのかは謎。
そして「救世主」たちの目的もまた謎。

少年たちはどこから連れてこられ、
何のために「虎の穴」も裸足で逃げ出すほどの厳しい訓練を受け、
どこに送り出されていくのか?

この少年たちの置かれた環境の苛酷なこと。
毎日が命がけのサヴァイヴァル・ゲーム。
私も自分の労働環境「けっこうしんどいなあ」と思いながら働いておりますが、
すみません、ここに較べたら楽園です。
私が「サンクチュアリ」に放り込まれたら3日でなぶり殺しです。

そんな「サンクチュアリ」で悪夢のような5年間を生き抜き、
その結果だれも信用せず、心を許さず、人との交わり方すら知らない主人公ケイル
しかし後半、戦いと殺戮にあけくれる彼も、ついに友情と愛情に目覚めます。

 「なんとなく普通の成長小説型ファンタジーみたくなってきたぞ」

と思ったら、ラスト近くでまさかの展開。
敗北と裏切りに打ちのめされるケイル! 
物語はふたたび暗黒面に大きく舵を取り、

 「いったいどうなるんだ〜!!」

というところで本書は終わります。

そう、これは三部作の第一作なのです(知らずに読んでた)
な、なんということだ!
早く続きが読みたい〜。

(2012.5.6.)


追記:第2部「悪魔の右手」が出ました→クリック

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