コダーイ/無伴奏チェロ・ソナタ ほか
(ヨー・ヨーマ:チェロ 1999録音)



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バッハの無伴奏チェロ組曲を、かれこれ7年ほど練習しています。
しかしいまだに第1番すらヒトサマにお聴かせできるレベルに程遠い惨状。
まあ練習の成果も多少はあり、「聴いても直ちに人体に影響を与えないレベル」にはなっていると思われますが。

さて、チェロのための無伴奏作品でもっとも壮大で長大で演奏困難な曲、いわば「無伴奏チェロ界のラスボス」と呼べるのがおそらくはこの曲

 ゾルタン・コダーイ/無伴奏チェロ・ソナタ

ハンガリー人の名前は日本と同じく姓が前らしいので、正しくはコダーイ・ゾルタン(1882〜1967)か。
コダーイと言いながらじつはけっこう現代に作られた曲で(←おい座布団全部もってけ)、1915年に作曲されました。
3楽章で演奏時間30分、音域は5オクターブ(超広い)、チェロのあらゆる技巧を駆使しまくり、
おまけにG弦とC弦を半音下げて調弦するスコルダトゥーラの指定まである、ものすごい難曲です。

楽譜を見たら、「これチェロ1本で弾けるの? ピアノでも難しいでしょ!」と言いたくなるほど。



第1楽章(ソナタ形式)


異様な熱気と緊張感が張りつめ、かなりとっつきにくいです。
私にとっては「納豆」と同じくらいのとっつきにくさ(苦手なんですわ)。
しかし、コダーイはハンガリー民謡の研究をライフワークにしており、そのエッセンスが随所に。
何度か聴いていると、徐々に口ずさめるフレーズが発見できるようになります。
一見怖そうだけど仲良くなったらじつは気さくな人だった、みたいなキャラの曲。

第2楽章は、東洋風で幻想的なメロディが渋いながらも味わい深いです。
私には、武道の達人が月夜に山頂でひとり瞑想にふける情景が思い浮かぶのですが。

第2楽章より(三部形式)


そして第3楽章、これは凄いです、壮絶です、人間とチェロの格闘技のような、4本の弦で祭りの喧騒を完全再現みたいな。
フィドル弾きながら踊ってるような箇所、バグパイプ鳴らしているような箇所、すべてが超絶技巧というか神技の連続。
激烈にしておどろおどろしい響きの饗宴、一人の人間と一台のチェロに可能な、これは極限でしょうと思わずにいられません。

第3楽章(ロンド形式)


以前ライヴでこの曲を聴いたとき、演奏者が勢い余ってエンドピンがすべり、思わず楽器を取り落としそうになるハプニングに遭遇したことがあります
(楽章の最初から弾きなおしました)。
普通の曲ではまず考えられないことです。

この曲の名盤といえばヤーノシュ・シュタルケルの1950年録音が有名で、いまだにこれがベストなんだとか、でも持ってません。
わが家にあるのはヨー・ヨー・マの録音、なにこれ無茶苦茶に上手いやないですか〜。
なんといっても音が美しく、しかもその音色が多彩で上品。
音楽を激しく疾駆させながらも、凛とした姿勢を崩しません。
上手すぎて迫力が少ない? いやいや結構な迫力だと思いますがね〜。
東洋的な雰囲気も好ましいし。



シュタルケル聴いたことがない私が言うのもなんですが、

 「ヨー・ヨー・マもまーまーよ!」(←失礼だろっ!)

(2018.09.24.)


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