須賀しのぶ/革命前夜
(文芸春秋 2015)



Amazon.co.jp : 革命前夜

1989年、ピアノに打ち込むため、バブルに浮かれる日本を離れ東ドイツに留学した眞山柊史
留学先のドレスデン音楽大学には、二人の才能あるヴァイオリニストがいた。
正確な解釈で端正に弾きあげるイェンツ・シュトライヒ
大胆かつ奔放な演奏で圧倒的個性をひけらかすヴェンツェル・ラカトシュ
留学早々ラカトシュの伴奏を依頼された柊史は、彼の奔放さに振り回され、自分の音楽を見失ってしまう。
悩む柊史は、なにげなく入った教会で若き女性オルガニストの弾くバッハのコラールを聴き、その演奏に衝撃を受ける。


読み応え抜群の音楽小説!


ベルリンの壁崩壊直前の東ドイツを舞台にした、波乱万丈のクラシック音楽小説。

須賀しのぶ/革命前夜

最高に面白かったです。

東ドイツの閉塞的状況と、それを打破しようとする動きのスリリングなせめぎ合いが、物語のバックグラウンド。
西側に憧れ自由を求めつつ祖国愛も捨てきれれない若者たち。
互いを監視・密告し合い、誰がシュタージ(秘密警察)のスパイなのかわからない社会状況。
「自分の音」を見つけるべく苦闘する主人公の姿。
それらが混然一体となって、大きなうねりを描きながら力強く展開してゆきます。

息が詰まるような東ドイツ社会にとまどう柊史と、冷戦に翻弄されてきたツンデレ美人オルガニスト・クリスタの恋の行方も目が離せません。
それにしても彼女がラインベルガーのオルガン曲を弾いてくれたのにはびっくり、ツウな選曲ですね〜。

 ラインベルガー:オルガン・ソナタ第11番・第2楽章「カンティレーナ」
 

後半で、天才だけど性格は最悪のヴァイオリニスト・ラカトシュが事件に巻き込まれ、
真相を巡り二転三転するあたりはミステリとしても面白く読めます。
ミステリ部分も激動する社会状況と密接に結びついていて、浮いていません。

昭和が終わった日(1989年1月7日)に始まり、ベルリンの壁が崩壊した日(1989年11月9日)に終わるという構成も心憎いばかり。
劇的でありながら希望に満ちた幕切れが感動的です。
余韻に浸りながらあちこち読み返しました。

(2016.3.5.)

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