北村薫のうた合わせ百人一首
(新潮文庫 2019年  親本は2016年)



Amazon : 北村薫のうた合わせ百人一首

現代短歌の魅力を味わい尽くす、前代未聞のスリリングな随想。
二つの短歌の断ち切り難い言葉の糸を独自の審美眼で結び合わせた50組100首に、
塚本邦雄・石川美南から三井ゆき・佐佐木幸綱まで、総数550首を収録。


私と短歌のかかわりといえば・・・。

高校生の頃に古文の授業の影響で百人一首を一生懸命暗記したっけ。
でもこれまで買った歌集は、「サラダ記念日」のみ。
あとはたまに新聞の歌壇をナナメ読みして、「これ程度なら自分にも書けるかも」と不遜で罰当たりなことを思うくらい(思うだけ)。

そんな私ですが、ニョウボが買って食卓に放り出してあったこの本をなにげなく読み始めたら、すっかりはまってしまいました。

 北村薫のうた合わせ百人一首

作家の北村薫が現代歌人から100人を選び、現代版「百人一首」を作ったもの。
そもそも百人一首は二首を一組として構成されているんだそうです。
本書も、各章の冒頭に二人分の二首を掲げ、そのあとに著者の解説・評論が記述される形式で、2首×50話=100人(100首)。

その他にも文中で関連する短歌をいろいろ紹介しており、総計550首が収録されています。

北村薫の解説は語り口は優しいのですが少々専門的というか難解というか、「これくらい知ってるよね」な前提で進んでいく大学の講義みたいな感じ。
そこは適当に読み流しても良し、立ち止まって検索しても良し。
私はスマホ片手にいろんな歌人を検索しながら読んでましたが、途中から面倒くさくなって流しました。

選ばれた短歌は当然ながら傑作ぞろい。
北村薫自身は短歌は詠まないそうですが、選歌眼はすごいんでしょうね、きっと。
本書の百首を選ぶために、何百冊もの歌集に目を通したはず、労力に頭が下がります。

個人的に印象に残った歌は・・・。

 垂れこむる冬雲のその乳房(ちちふさ)を神が両手でまさぐれば雪
                              松平盟子

 おしゃべりの女童逝きぬをりをりに思ひ出づれば花野のごとし
                             桑原正紀

 この朝クロワッサンちぎりつつ今はどこなる一生の中のどこなる
                             高瀬一誌

 どんなにかさびしい白い指先で置きたまいしか地球に富士を
                             佐藤弓生

 私が死んでしまえばわたくしの心の父はどうなるのだろう
                             山崎方代

 泣くおまえ抱けば髪に降る雪のこんこんとわが腕(かいな)に眠れ
                             佐々木幸綱

 秋草にすわれば風がわたりをりこれだけの生これだけのこと
                             吉岡生夫

 わたくしといふわたくしをひとりづつたたきおこして生涯終はる
                            小池純代

 春宵の酒場にひとり酒啜る誰か来んかなあ誰あれも来るな
                            石田比呂志



ちょっと苦労したのが、歌の切れ目というか、どこで切って読めばよいのかわかりにくいこと。
なにげに読みにくいんですけど。
句読点とか、入れちゃいけないんですかねえ、いけないんでしょうねえ・・・。

(2019.11.23.)


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