蜂谷涼/蛍火(2004)
(文春文庫 2008年)
Amazon.co.jp : 螢火 (文春文庫)
女一人、すべての汚れをひきうけて、心をこめて染みを抜く。
今日、TVを見ながらニョウボと、
「NHKで『坂の上の雲』のドラマが・・・」
みたいな話をしていると、娘が
「『坂の上の雲』ってなに? 『崖の上のポニョ』のもじり?」
などと訊いてきました。
私「全然関係ないっ! しかも『坂の上の雲』のほうが先じゃ!」
娘「それで、どんな話なの?」
私「読んでないわっ、えへん!」(←堂々と言い放つのが親の威厳というものです?)
ちなみにニョウボは昔読んだそうです。
そのニョウボは、別にそれほどうっかりものではないのですが、
なぜかちょくちょく食べこぼしをします。
(食卓で馬鹿話が弾むからかな)
よくクリーニング屋のお世話になっています。
本書「蛍火」の主人公つるは、着物の染み抜き屋。
今で言うクリーニング屋でしょうか。
なにやら翳りを帯びた三十歳くらいの美女です。
舞台は明治末期の小樽。
同じ長屋に住む謎の老人・勘兵衛、いつも突っ張っている女仕立て屋・とさか、
そしてつる自身の過去が、徐々に明らかになってゆく語り口・巧みな構成に、ただ酔うのみ。
着物の生地のこと、酒の肴の作りかた、小樽という街の事、
維新のおりの薩長連合と会津藩のいきさつなど、
詳しく知っているともっと面白いのでしょうが、なんにも知らぬ私でもとても楽しめました。
蜂谷涼さん、以前読んだ「へび女房」もとても良かったですが、この「蛍火」も素敵な作品でした。
やわらかく余韻のある終わり方がいいですね。
じつは昨年の夏に北海道を旅行したのですが、小樽には立ち寄らなかったのです。
ざ、残念なことをしました・・・・。
またぜひ行きたいものです。
(09.1.14.)