ホルスト/組曲「惑星」(2台ピアノ版)

Amazon : 惑星(2台ピアノ版)
20世紀に書かれた管弦楽曲の傑作、みんな大好きホルスト「惑星」。
この曲に作曲者自身による2台ピアノ版があることはあまり知られていません。
ただし管弦楽をピアノに編曲したのではなく、まず2台ピアノ版が作られ(1914〜16)、つづいてオーケストレーションが行われました(1916〜17)。
オーケストレーションは、セント・ポール女学校の同僚 ヴァリー・ラスカー(Vally Lasker)とノラ・デイ(Nora Day)が2台ピアノで演奏し、
ホルストはそれを聴きながら各音型を「どの楽器に与えるか」を具体化し、赤インクなどで楽器指定を書き込み、
その指示をもとに、助手たちが大規模な管弦楽スコアを書き起こすという形で行われました。
つまり2台ピアノ版は独立した作品というよりは、管弦楽のための下書き・スケッチ・設計図なわけです。
ブラームスが交響曲を2台ピアノに編曲したのとは真逆ですが、設計図に実際の建物とはまた違った面白さがあるように、けっこう興味深いです。
第4曲 木星(ジュピター)・快楽の神
人気のジュピターはピアノで聴いても華やかで楽しいですが、最も興味深いのが最終曲「海王星・神秘の神」。
オーケストラだと、なんかモワーッとした音がフワフワ漂ってるうちに終わっちゃう感じですが、
ピアノだと一つ一つの音がきちんと聴こえるので、「あ、こういう曲なんだ」と認識できます。
ラヴェルやドビュッシーの影響が見て取れ、遠い世界で川の流れが変容し、彼方に消えてゆくような印象を受けます。
管弦楽版だと舞台裏からの歌詞のない女声合唱が加わり、得も言われぬ神秘さに昇天しそうになりますが、ピアノ版だと冷静に聴けます。
第7曲 海王星・神秘の神
しかし最後の1曲のみ女声合唱を加えるという贅沢で大胆な発想は、ホルストがセント・ポール女学校の音楽教師だったからでしょうか。
「水と女声合唱はタダ」と思ってたりして、この人。
(2026.09.06.)