平尾貴四男作品集U
平尾はるな:ピアノ、辻功:オーボエ、島根恵:ヴァイオリン 1996録音)



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<曲目>
オーボエ・ソナタ(1951)
ピアノ・ソナタ(1948)
ヴァイオリン・ソナタ(1947)



かなり偉い人らしいのです。

 平尾貴四男(1907〜1953)
 東京で化粧品業を営む裕福な家庭の四男として生まれ、慶応義塾幼稚舎、慶應義塾普通部をへて慶應義塾大学医学部に進むが、文学部独文科に転じて卒業。
 幼少期から音楽も学び、徐々に音楽の道にすすむ決心を固める。(結局日本では音大は出ていない)
 1931年からパリに留学し、スコラ・カントルムとセザール・フランク音楽学校で作曲およびフルートを学び、1936年に帰国後はローゼンストックに師事する。
 第二次大戦では徴兵されるが、間もなく敗戦となり無事に帰還。
 作品にはオペラ「隅田川」、管弦楽曲「砧」、ヴァイオリン・ソナタ、ピアノソナタ、歌曲などがあり、室内楽がほとんどを占める。
 戦後は国立音楽大学教授、日本現代音楽協会委員長などを務めるが、1951年の「オーボエ・ソナタ」を最後の作品として46歳で病没。


二世代ほど下の矢代秋雄(1929〜1976)も、東京の上流家庭に生まれ、フランスに留学し、
帰国後は日本作曲界の重鎮として将来を期待されながら、46歳で病死したのは奇妙な暗合と言わざるを得ません。

なお、作曲家・歌手の平尾昌晃は甥にあたるそうです。


私が若いころから愛読している音楽之友社「最新名曲解説全集」には、平尾貴四男「ピアノ・ソナタ」がとりあげられていて、

 「平尾の美学の領域を拡大し、転換期をもたらせた重要作品である。また内容と意匠との見事に均整がとれた完成度の高いこの作品は、
  それ以降の日本のピアノ曲に対して、古典と呼ぶにふさわしい姿で存在する」
  (「最新名曲解説全集 (17) 独奏曲4」329ページ、音楽之友社 1981年)

と大絶賛、ここまで書かれたら聴きたいですよねー。
でも当時は手に入る音源がなく、聴こうにも聴けませんでした。
最近ふと思い出し、「You Tubeで聴けるかも」と思ったのですが、アップされているのは第3楽章のみでした(名演奏ですが)。

平尾貴四男「ピアノ・ソナタ」第3楽章(堂々たるフィナーレですな)


辛抱たまらず、とうとうCDを買ってしまいました(作曲者の娘さんが演奏した1種類しか出てないという・・・)。

いやー、たしかに名曲ですわ。
ドビュッシー、ラヴェルに通じるフランス近代の響きと、作曲者の血を流れる日本的情緒の幸福な融合。
切迫感と緊張感に支配された、激しく疾走するようなソナタ形式の第1楽章。
ゆるやかにまどろむような、内に向かった情緒が淡く輝くような第2楽章。
そして作曲者が「速度と運動の目まぐるしい世界」と記した、刺激的で現代的で爆発的で諧謔的で快楽的なソナタ形式の第3楽章。
いろんなピアニストが取り上げ、さまざまに演奏解釈を深めるに足る名品だと思いますが・・・そもそもあまり需要がないんでしょうね、「日本のピアノ・ソナタ」って。

You Tubeに比較的たくさん上がっているのが、最後の作品である「オーボエ・ソナタ」(1951)


昔話でも語っているみたいな、のんびりした、ひなびた雰囲気、なごみます。
日本的ですが、どことなくおフランスな感じも漂います。
第3楽章は快活なロンド、遊び戯れるような明るいフィナーレです。
短いですが、簡潔に隙なくまとまった名曲です。



「ニコニコ動画」に「ヴァイオリン・ソナタ」と「ピアノ・ソナタ」の音源がアップされていることをあとで知りました。

 ニコニコ動画/平尾貴四男「ヴァイオリン・ソナタ」「ピアノ・ソナタ」

この「ヴァイオリン・ソナタ」(1947)が、また素晴らしい。
洗練された日本的情緒が香り立つ冒頭だけでも、ぜひ聴いてみてください。
アレグロ・アジタートの第1楽章・主部も日本的で流麗なメロディが満載。
一歩間違えると浪花節になってしまうところを巧みに踏みとどまり、芸術性と聴きやすさが絶妙なバランスをとっています。
フランクやフォーレの影響も聴こえますが、五音音階や和楽器的な響きをうまく織り込んで、独創的に仕上げてます。
第2楽章は中間部にスケルツォを持つ子守唄、「和」のうたごころがチョー魅力的。 
第3楽章は端正で活発なロンド、澄んだ情熱、凛とした旋律、この明るさは戦争が終わった解放感も影響しているのでしょうか。

3曲とも堂々たる名曲です!
もうちょっと広く聴かれてもいいと思うんですがねー。
ナクソスあたりからCD出ないかな。

(2017.08.12.)

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