ヘニング・マンケル/クルト・ヴァランダー・シリーズ
(創元推理文庫)


第1作:殺人者の顔
Amazon.co.jp : 殺人者の顔

90年代スウェーデンの警察小説シリーズ。
1991年から年1作ずつ発表され、1999年に全9冊で完結したそうです(キリの悪い数・・・)
日本では2006年2月現在、第4作まで翻訳されています。

スウェーデンの警察小説といえば、年季の入ったミステリ読みなら即座に
マルティン・ベック・シリーズ(1965〜1975)を思い出すはず。
しょぼくれたオッサンが主人公であることや、スウェーデン社会の暗部をえぐる社会派の傾向があることなど、
実際、共通点は多いです。

第1作「殺人者の顔」は、田舎の農家で起こった老夫婦惨殺事件がテーマ。
貧しく静かに暮らしていた夫婦がなぜ殺されねばならなかったのか?
主人公・ヴァランダー警部は何度も挫折しながら地道な捜査で読者をぐいぐい引っ張ってゆきます。
重厚な読後感が味わえます。

第2作「リガの犬たち」では、スウェーデンだけでなく海を挟んだラトヴィアが重要な舞台となり、
ヴァランダーは両国をいったりきたり、後半はラトヴィア独立を巡るスパイ・サスペンス、
冴えない中年男ヴァランダーが、映画のようなアクションシーンをこなします。

第3作「白い雌ライオンは、ヴァランダーはスウェーデンにとどまるものの、
KGBの元スパイ、南アフリカ人の殺し屋、アパルトヘイト政策の廃止などが色濃く絡んできて、ますます国際色が強まります。
実際、90年代のスウェーデンは、外国人の亡命や出入国にきわめて寛大(というかルーズ)であったため、
外国の犯罪者の格好の潜伏先になっていたそうです。
わけあって警察組織からも離れ、たったひとりボロボロ・ヘロヘロになりながら犯人を追跡しつづけるヴァランダーです。

第4作「笑う男」、警察に復帰したヴァランダー、友人の弁護士が殺害された事件の捜査中に、
世界を股にかける犯罪組織の存在に気づき、その黒幕の素顔を暴いてゆきます。
車に仕掛けられた爆弾を察知し間一髪で難を逃れるなど今回も大活躍のヴァランダー、ちょっと「007」が入っているかも。


それにしてもヴァランダー警部、普段のしょぼくれぶりと、いざというときの大活躍とのギャップが大きすぎです〜。
そういう芸風なのでしょうけど (芸風?)
「刑事コロンボ」が「ダイ・ハード」を演じているみたいなミスマッチ感が、私には面白いです。

普段のヴァランダーはといいますと・・・
家出した妻とよりを戻そうと食事に誘えば、あっさり振られ、ヤケクソで飲酒運転してパトロール警官につかまったり、
魔がさして美人女性検事にセクハラしたり、警部のくせに空き巣に入られたり、相当に情けないです。
それが事件になると、いきなりスーパーな活躍。 一種、オッサンのための「変身ヒーローもの」に近いノリが。

最近お疲れのお父さんがた、ストレス解消にいかがっすか。
(06.2.9.)

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