マイクル・コーニイ/ハローサマー、グッドバイ
(1975)
(山岸真・訳 河出文庫 2008年)


Amazon.co.jp : ハローサマー、グッドバイ

<ストーリー>
政府高官の息子ドローヴは、今年も避暑のため一家で港町パラークシを訪れた。
宿屋の娘ブラウンアイズと念願の再会を果たすドローヴ
海に粘流(グルーム)が訪れ、グルームワタリ鳥が飛来する夏、
戦争の影が町を覆うなか、ふたりは急速に惹かれあってゆく。


「幻の傑作」

「SF史上屈指の青春恋愛小説」

なのだそうです。

80年代にサンリオ文庫から邦訳が出ていたものの、
長いこと絶版になっていたんだとか。

そもそも「幻の傑作」とか「期間限定」とか「2枚で25%OFF」とかいう言葉には弱い私、
おっさんにはちょい恥ずかしい表紙イラストにもめげず、
本屋で見かけて即購入いたしました。

毎年避暑に訪れる港町パラークシで、去年知り合った少女ブラウンアイズと再会する少年ドローヴ
舞台は異世界ですが、あまりSFぽくなく、正統派のボーイ・ミーツ・ガール・ストーリーです。
清楚なブラウンアイズに対して、友達の派手な美少女リボンを配し、ちょっとした三角関係も、お約束です。
甘酸っぱい、甘酸っぱいぞコノヤロ!

あと小賢しい気取りやのウルフくんもいい味出してますよ! ガンバレ!
と、スネ夫クンやねずみ男がわりかし好きな私は思うのであります。

この惑星には、独特の動植物や自然現象があり、人々の暮らしに影響を与えています。
穏やかな気性で精神感応力をもつ哺乳類ロリン
水中に潜み一瞬で水を結晶化させて獲物を捕らえる氷魔(アイスデビル)という謎の生物。
そして、夏の終わりに、海の水が粘度を増してゼリーのようになる、粘流(グルーム)という現象。
イマジネーション豊かに語られる異世界の風景。
もちろんこれらは物語を動かす重要なアイテムでもあります。
なおこの世界、科学技術は未発達で、地球で言えば19世紀末くらいのレベルです。
「未来少年コナン」「天空の城ラピュタ」とイメージが重なります。

彼らの国は隣国と戦争中。
辺境の町には直接戦火は及びませんが、物資は次第に乏しくなってゆきます。
食糧危機を回避するため町外れには最近大きな缶詰工場ができたばかり。
しかしこの工場には何か妙なところが・・・。
工場の近くでリボンの弟が失踪するなどして、町には不穏な空気がたちこめます。

終盤に入って、とつぜん物語は大きく動きます。
政府高官メストラーの意外な行動(この人もつらかったんだね・・・)
一般市民と上層部の軋轢、二人の仲もいやおうなく引き裂かれ・・・。
このあたりの展開は、人間の身勝手さや醜さを赤裸々に描いてやや辛いです。
とくにリボンかわいそすぎ。 そこまでやらんでも。。。

そしてラスト。
いやーひっぱりますね。
最後の1ページまで着地点が見えません。 なるほどこうくるのか。
訳者あとがきには「SF史上有数の大どんでん返し」とあります。
ミステリでなくSFでドンデン返しとは、珍しいです。
しかも思い起こせばプロローグからしっかりぶっとい伏線が!
「なるほどやられた!」という感じであります。
ただ、見方によっては相当皮肉なラストとも言えます。 ほろにが風味。

夏の休暇、避暑地への旅行のお供にぴったりでしょう。
え、私ですか?
き、休暇なんか、避暑地なんか・・・、なくったって、行かなくたって、生きていけるわい〜〜〜!!(泣)

(08.7.14.)



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