マイクル・コーニイ/ブロントメク!(1976)
Michael Coney/Brontomek!
(大森望・訳 河出文庫 2016)



Amazon.co.jp : ブロントメク! (河出文庫)


52年に一度、植民惑星アルカディアの6つの月が揃って空にかかる時、
人々は海面を埋め尽くしたプランク トンに精神を支配され次々と海に飛び込み、巨頭鯨・ブラックフィッシュの餌食となった。
その災厄から2年、人口の30%は他の惑星に移住してしまい、アルカディアの経済は崩壊に瀕していた。
そんな中、銀河に広がる巨大企業・ヘザリントン機関がアルカディアに支援を申し出た。
住民たちは受け入れ、労働力として多数の無定型生物・アモーフと巨大なトラクター型ロボット・ブロントメクが送り込まれてくる。
いっぽう地球からの移住者である船舶設計技師のケヴィン・モンクリーフは、進水式のために雇ったキャンペーンガールのスザンナに一目ぼれするが、
処女航海に失敗し、ヘザリントン機関から莫大な借金を背負う羽目になる。


「ハロー・サマー・グッドバイ」(1975)で有名なイギリスのSF作家、マイクル・コーニイ
続編の「パラークシの記憶」も面白かったです。

本作「ブロントメク!」は、「ハロサマ」と直接の関連はありませんが、
特殊な生態系を持つ惑星を舞台に、甘酸っぱいボーイ・ミーツ・ガールが繰り広げられる、よく似た雰囲気の作品。
「ハロサマ」が気に入った方なら、こちらも楽しく読めるはず。

物語の背景が、「ハロサマ」では戦争でしたが「ブロントメク!」は経済危機。
災害で人口が減って景気が悪化・・・・・・、日本人には他人事と思えない設定です。
ヘザリントン機関が提示する再建策に従うか否かで、主人公が属するコミュニティは分裂しますが、
それほど殺気立った雰囲気ではなく、のどかで牧歌的に展開するところが、なんとなくイギリス的。

理想の女性スザンナと出会った幸せもつかの間、借金を背負う羽目になった船舶設計技師ケヴィン・モンクリーフは、
アルカディアへの植民者を募るキャンペーンである、惑星一周冒険航海に使う船の設計をヘザリントン機関から依頼されます。
「なにか裏がある・・・」と思いながらも、従うしかないケヴィン。
スザンナとの恋が順調なことだけが救いの彼ですが、徐々に機関の計画に巻き込まれてゆくことに。

「ハロサマ」もそうでしたが、単純な悪役が存在しないのが良いですね。
支援策に賛成する人も反対する人もそれぞれ言い分があるし、ヘザリントン機関もべつに悪の組織ではなく営利企業にすぎません。
善悪ではなく経済原則に従って動いているだけなのです。
惑星の経済は再建できるのか、そしてケヴィンとスザンナの恋の行方は・・・?
ラスト近くで明かされる「仕掛け」は、ある程度想定の範囲内ではありましたが、それでもけっこうびっくりしました。
やっぱりコーニイはせつないっす、せつなさ標準仕様なんですね。

個人的には「ハロサマ」のほうが好みでしたが、面白く読みました。

(2016.03.27.)

「本の感想小屋」へ

「整理戸棚」へ

「更新履歴」へ

HOMEへ


「いろりばた(掲示板)」へ

コメントはこちらにどうぞ