アスガー・ハメリク/交響曲第6番「優美な交響曲」(弦楽のための)
(トマス・ダウスゴー指揮 ヘルシンボリ交響楽団)



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「限定版」とか「全集」とかいう言葉に極端に弱い木曽のあばら屋です。

先日も、聞いたことない作曲家の交響曲ボックスを、「全集」であると言うだけの理由で衝動買いしてしまいました。

 アスガー・ハメリク(Asger Hamerik, 1843〜1923)

ハメリク ハマリタ ヤンバラヤンヤン・・・・・・魔法使いサリーちゃんの呪文みたいな名前ですな。

 デンマークに生まれ、若いころはゲーゼに師事。
 1862年に母国を出て修行の旅へ。ドイツでハンス・フォン・ビューローに師事したり、フランスでベルリオーズにかわいがられたり。
 1871年にはアメリカに渡り、メリーランド州ボルチモアのピーポディ音楽学校の校長に就任、30年のアメリカ生活を送る。
 1900年に母国に戻り、指揮活動などをしながら悠々自適の余生を過ごした。

・・・知らんなあ、こんな人(なぜ買った)。
アメリカに渡って音楽院の校長になったといえばドヴォルザークが有名ですが、彼は2年半でヨーロッパに戻ってます。
ハメリクの30年は凄いですね、よっぽど居心地が良かったのかな。
ちなみにアメリカで音楽院のピアノの生徒だった若い嫁さんもらってます。

ハメリクの交響曲は全部で7曲。

  交響曲 第1番 ヘ長調 作品29《詩的な交響曲》 "Symphonie poetique" (1881年)
  交響曲 第2番 ハ短調 作品32《悲劇的》 "Symphonie tragique" (1882年)
  交響曲 第3番 ホ長調 作品33《抒情的》 "Symphonie lyrique" (1885年)
  交響曲 第4番 ハ長調 作品35《荘厳なる交響曲》 "Symphonie majestueuse" (1889年)
  交響曲 第5番 ト短調 作品36《厳粛な交響曲》 "Symphonie serieuse" (1891年)
  交響曲 第6番 ト長調 作品38 弦楽合奏のための《優美な交響曲》 "Symphonie spirituelle" (1897年)
  交響曲 第7番 作品40《合唱付き》(1906年、未出版の初稿は1898年)


ほとんどアメリカ時代に書かれています。

ひととおり聴いたところでいちばん良かったのが交響曲第6番 "Symphonie spirituelle"(弦楽のための)
Wikipediaでは「宗教的な」と訳されていますが、これは誤訳で、「優美な」とか「洗練された」の意味でしょう。
じつは作曲当時、ボルチモアのオーケストラの管楽器奏者がストライキに入っていて、仕方なく弦楽器だけで作曲したんだとか。
初演は、彼の交響曲の中で最も好評でした。
怪我の功名というか、塞翁が馬というか。


第1楽章
和音の強奏につづき、チャイコフスキー「弦楽セレナード」に似た主題で始まります。
明るくポジティブに手堅くまとめられたソナタ形式で、いかにも「ゲーゼの弟子」という雰囲気。
どこまでも前向きで気持ちが良いです。

 

第2楽章はト短調のスケルツォ、しかし悲壮感はなく、元気に踊るよう。

 

第3楽章アンダンテ・ソステヌートは変奏曲。
美しいです、優美です、洗練されてます。
どこにも奇をてらったところはなく、変奏も素直でひねりはなく、ごくシンプル。
こんなに素直でいいかしら?!

 

第4楽章は、第1楽章冒頭主題の回想ではじまり、明るく陽気に駆け抜けるソナタ楽章。
最後は第1楽章冒頭主題の変形を力強く演奏して終わります。

 

いやー、いい曲です。
難解さや重厚さや深刻さはどこにもなく、ただ明るく優雅で美しい。
深みがないと言われれば確かにありませんが、それがどうした。

 全曲(ライブ演奏)
 

他の曲ももっとしっかり聴いてみるといたしましょう。

(2017.08.27.)

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