ヒラリー・ハーン・プレイズ・バッハ
バッハ/無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番、第2番
無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番
(ヒラリー・ハーン独奏 1997年)



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異形のシャコンヌ


世界最高の若手ヴァイオリニストのひとりであるヒラリー・ハーンが、17歳で録音したデビュー・アルバム。
いきなりバッハの無伴奏とは、大胆不敵というか傍若無人というか天上天下唯我独尊というか、
じつに素晴らしいですね。 こういうヒト好きです。

パルティータ第3番の元気ハツラツなプレリュードではじまり、叙情的で優雅なルールに続きます。
3曲目の有名なガヴォットは、重心の低いどっしりした演奏。
このあたりで「若手にしては落ち着いてるな〜、一味違うな〜」と思わされます。

全体にロマン派風で濃厚&くっきりした味付けですが、やはり白眉はパルティータ第2番の第5曲「シャコンヌ」
無伴奏ヴァイオリン曲の最高峰ともいわれるこの曲を、おおかたのヴァイオリニストは13〜14分程度で演奏します。
しかしヒラリー・ハーンはなんと17分47秒!!

 無茶苦茶に遅いです。

まあウチの娘もショパンのワルツなどを無茶苦茶に遅いテンポで弾いてますが、もちろん次元が違うのであります(←あたりまえじゃ!)
テンポは遅くとも、一瞬たりとも間延びせず、一音たりともゆるがせにしない、威風堂々・泰然自若・質実剛健・荘厳無比な超名演。
ヴァイオリンの若き女王が音で築き上げた大伽藍とでも言いましょうか、とくに後半のスケールの大きさ、壮大さは尋常ではありません。
17歳でここまで個性的な音楽を聴かせるこの人っていったい何者・・・・・圧倒されます。

 

 

彼女の演奏を聴いたあとで、他のヴァイオリニストのCDを聴くと、「なんだかセカセカした軽い演奏だな〜」と思ってしまうほどでありまして、
ある種の魔力を秘めた、まさに異形のシャコンヌなのです。

(07.10.20.)


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