グアスタヴィーノ/歌曲集
(レティツィア・カランドラ:ソプラノ マルコス・マドリガル:ピアノ 2020録音)



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パンパスのシューベルト!


カルロス・グアスタヴィーノ/歌曲集

ジャケット写真を見て、「なんかよさそう」と思ってYou Tubeで探してみたら、「メチャクチャええやん!」

ついふらふらと買ってしまいました。
買わなくてもYou Tubeで聴けるのに・・・、CDの置き場がなくて困っているのに・・・。
なんという非合理的で非経済的な行動でしょう、ある種の病気かもしれないと思いつつ全然後悔していないので救いようがありません。

とにかく素敵なんです、まあ聴いてみてください。

 歌曲集「アルゼンチンの花々」より第1曲"Cortadera, plumerito"(ススキと羽ぼうき)
 

  コルタデラ、プルメリト 風に揺れる真珠たち
  青々とした君の葉 その記憶に 切なさがこみ上げる
  懐かしいクローバの広がる故郷 いつの日か 帰れるだろうか
  コルタデラ、プルメリト かつて暮らしたブエノス・アイレスの草原 
  空を見つめる君を よく見ていたあの頃



 ヤバイくらい美しいじゃないですか!!
 いったいなんなんですかこれは!

カルロス・グアスタヴィーノ(1912〜2000)は、アルゼンチンの作曲家。
アルゼンチンと言えば、アストル・ピアソラ、アルベルト・ヒナステラ、あと個人的に大好きなアリエル・ラミレスといった作曲家がいます。
グアスタヴィーノの名は寡聞にして知りませんでしたが、ラミレスにも通じる親しみやすい作風。
一抹の哀愁を含んだラテン・フレイバーの爽やかななメロディがじつにたまりません。

 歌曲集「アルゼンチンの花々」より第2曲"el clavel del aire blanco"(白いクラベル・デル・アイレ)
 

  白いクラベル・デル・アイレは
  呑み込んでしまった ため息
  大気の中で花になり 気高い香りを漂わせる
  愛しい少女に宿る花よ
  白いクラベル・デル・アイレ
  その白さを汚されることがないように
  無邪気そのものの花だから



グアスタヴィーノの作品は、歌曲とピアノ曲がほとんどで、管弦楽曲などはあまりないようです。
2000年まで存命でしたが、前衛的な要素はありません。
どこまでも耳にやさしくやわらかく、刺激成分はほとんど含まれていません。
しかし、素晴らしく魅力的なソングライターです。

 バラと柳
 

  バラが咲いていた 柳に寄り添いながら
  情熱的な柳の木は バラをとても愛していた
  けれど 気まぐれな女の子が バラを摘んで行ってしまった
  悲しい柳の木は バラを思って泣いている



生涯独身で、狭い部屋で質素に暮らし、その生活ぶりについてはほとんど知られていないそうです。
それにしてもどの曲も親しみやすい「うた」にあふれています。
ちょっとセンチメンタルな風情がたまりません。

 鳩のあやまち
 

  鳩はまちがった  まちがってしまった
  北へ行くつもりが 南へ行った
  麦が水だと思い込んで 
  海が空だと思い込んで
  夜が朝だと思い込んで
  星を夜露だと思い込んで
  日射しを雪だと思い込んで
  まちがってしまった
  きみのスカートをブラウスだと思い込んで
  きみの心を自分の巣だと思い込んで 
  まちがってしまった
  (鳩は岸辺で眠りについた そしてきみは枝の上)



本当にしみじみと美しい曲ばかり、これは長く愛聴盤となりそうです。


 ツバメの橋に
 


  おいで ハミングバード 橋まで
  ツバメの 愛しいひと!

  おはよう 紡ぎ娘よ
  目覚めたスイレン!

  おはよう ハミングバード!

  おいで ハミングバード 橋まで
  ツバメの 愛しいひと!

  こんにちは お針子よ
  咲いたカーネーション!

  おいで ハミングバード 橋まで
  ツバメの 愛しいひと!

  こんばんは 見張り女よ
  まどろむダリア!

  こんばんは ハミングバード!



(2021.05.01.)

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